白紙世界の旅日記【illust/57794659】
「この洞窟、ずぅっと続いてたら、出られなかったら、どうしマショウ……」
◽︎ ダンデ=リタ
〔155㎝/一人称:リタ、二人称:あなた、○○さん/Pナンバー:2〕
魂の重さを図る概念のちっぽけな一部でしかなかった記憶、ダンデ=リタと名付けられた『本来の自分』の在り方を思い出した。少女とも少年とも言えぬ姿である。
また異様に強くはたらくようになった嗅覚により廃墟にて死臭を嗅ぎ取ってしまった。巾着袋の骨からも感じるが、どうにも捨てられない。
嗅覚を抑えるために、顔半分を覆うほどのマスクを着けている。必要とあらば外すのかもしれない。灯りがないため嗅覚や手の感触、風の抜け方などを感じつつ進んでいる状況。
新しいものを見て触ること、誰かと沢山話すこと、自分で何かを作ることを知り、現在の自分は『本来の自分』とは違うのではないかと考え始めた。
音のない暗い洞窟、そこは自分がいた場所とよく似ている。それでもどこか、気を抜いてはならない張り詰めた空気を感じた。
どこに向かうのかは分からないが、転ばないようゆっくりと進んでいく。
◽︎ 技能
個体として存在する全てのものを鋏で断ち切り、針と糸で自在に縫いつけられるようになった。刺繍セットは腰部のリボンの下に仕込んでいる。
マスクは羊の毛や廃墟で手に入れた布などで作られている。
◽︎ 星のかけら:洞窟に入る前に一度光り、リタの姿を変えた。灯りとしては使えなさそうだ……。少女寄りの姿であり、服の裾をやや引きずっている。
◽︎ 旅路
第1期
アサギさん【illust/59372636】
「アサギさんは今頃どちらを歩いているんデショウね……」
「んっ! もしかして、石の声デスか!? ん〜……聞こえマセンね。……今、何か、グルルルって……」
ーーーーー
(11/8追記)
リタは洞窟の出口を見つける。
終わりなんてないと思っていた。ずっと暗いままだと思っていた。
長らく別れていた太陽に、僅かな懐かしみを感じてしまう。
不意に、目がさめる感覚を覚える。髪や袖を澄んだ空気が拾ったのだ。
《朝》だ。朝昼夜の違いがリタには分からなかったが、それはただ漠然と美しく、素晴らしいものだと感じる。
洞窟の黒に慣れた目にその光は少し痛い。しかし、陽の光を浴びた草木、周りの岩石、足元を這う虫は一斉に熱を持ち、動き出す。
(……あたたかい)
生命の目覚めを感じる。自分の体も服も、持ち物も、帽子もがあたたかく心地よい。
『行ってらっしゃい、リタ』 『色々なものを、様々なものを見ておいで』 『あなたもう分かったってこと? “知る”って素敵なことを』 『戻ってこようと思うなら、おみやげ話を忘れないでね』 『むこうは陸がないみたい。気をつけて』
自分に語りかける唐突の声を探すが、そこにはただ洞窟の出口、頑強な硬い岩があるだけだった。
洞窟の出口は切り立つ岩の上にあったようだ。視界の先には2度目の草原が見える。
「……行ってきマス!」
手を小さく振り、そうとだけ返す。
地面を見据えて、草の茂るところを把握し、なるべく衝撃を少なく。
腹を括り小さな崖を飛び降りる。その時、巾着に入った星のかけらから溢れんばかり光が溢れ出した。
▫︎好きな時間:2 朝
ーーーーー
問題、指摘等ありましたらメッセージにてご一報ください。
(随時更新)
2016-11-04 22:52:37 +0000