「あれから30年、いろんなことがあったね」
☑贈りたかった花:ムーンダスト。貴方【illust/58228435】のような月の名前を持つ蒼いカーネーション。
30年に一度の蒼い月。彼も誘ってくれたし私も見に行きたかったけれど、
『もしかしたら今日あの子が帰ってくるかもしれない』
そう思うと、どうしてもこの家を空けることはできなかった。
「ここからでも、蒼い月は見えるからいいんだ。ほらほら! せっかくだから明かりも消しちゃおう!!」
なんて口では言っていても、心の中ではやっぱり「残念だな」なんて思ってしまって。
本当は渡したい花もあったの。貴方のように優しくって綺麗な花。……まあたくさんそこにあるけど。
* * *
「30年前。リーちゃんの人形作ってくれたでしょう? そしてそれが嬉しくて私は
カチワリさんとキューブさんの人形を作って一緒に並べたよね。
…………実はね。あの時他にも人形作ったんだけどその時は渡せなくて、
『次の蒼月の日に渡そう』なんて思ってた物があるの、これ……」
「30年前の力作です」と添えて彼に渡す。
お供をみんな作ったのなら、足りないのはやはりコレだろう…と思って作っていた私と彼の人形。
でもそれは30年前の話。
「……二人と、みんなの分も作らないとね。…っ。…そうだ! 帰ってきた時に…びっくりさせてあげましょう!!!」
……。
ああ、やっぱり。まだダメだ。
二人の顔思い浮かべると、泣いちゃう。
思えば、この数年間。いろんな事があった。
でもいつも、貴方が、隣にいてくれて。きっと貴方も辛いのに。
「……っごめんね」
いつもありがとう。
貴方のおかげで、私はここまで歩いてこれたんだよ。
思えばこの人は私が倒れたり涙を流していたりした時、いつも側にいてくれた。胸を貸してくれた。
貴方だって辛いのは同じはずなのに。今もこうやって。
「………えーっとね。こんな胸を借りて泣いてる状態で言うと説得力ゼロなんだけど。
私はスィスが居てくれるだけでどんな事も大丈夫って思っちゃう? 安心しちゃう人で………。
つまり何が言いたいかというと…スィスにもね、無理はして欲しくないなーって思うんだよね私。
泣きたい時はスィスも泣いて? いや、無理に泣けとは言わないんだけど……。
…………私のせいでスィスが我慢しちゃうのは嫌じゃん」
* * *
どうかこの月が、二人を暖かく見守っていてくれますように。
私はいつだって貴女達の帰りを待っています。
だから、帰ってきて。
もう一度。家族みんなで笑い合えたら。
* * *
カーネーション『ムーンダスト』の花言葉:永遠の幸福
イナニス【illust/58213968】30年前に贈った花→【illust/58415751】
2016-09-13 15:00:01 +0000