「こんなところで咲くなんて……」
貴女が呟いた。
古城の石垣の間に、小さい花が咲いていた。
青い…夜空のような花びらのスミレの花。
リアルワールドで咲く花だと教えたら、貴女は
「そう……」
と呟いた。
貴女は何を思ったのだろう。
こんなところで咲いても、見つかればこの城の主に消されるだろう。
この城の主は、このような花は好まない。
リアルワールドから偶然運ばれて咲いたこの花を見て、私は貴女の『行方』を案じた。
貴女は優しい。この小さな花を心配するのだから。
貴女はこの花に似ているのだ。ここにいるべきではない。
けれど貴女は歩み出せる。いつか……。
「ぼんやりしている暇はないわ。置いていくわよ」
貴女はそう言い、私に背を向ける。
「この花をリアルワールドに返しましょう」
「……勝手にすればいいわ」
その花の根を傷つけないように、私は手に取った。石垣のわずかな土に生えていたのでそれは容易だった。
「余計なことをするのね」
「そうですね」
私は頷く。
私はそっとマントの下に忍ばせ、その花を運んだ。
そしてひっそりと、その花をリアルワールドの土に宿した。
私に背を向けていた貴女が振り返る。
「終わった? さっさと行くわよ」
邪魔が入らないように見張っていた貴女。
それが貴女の優しさ。
貴女がいつか、本来いるべき場所へ戻るようにと願う。
それだけが……私の願い。
/ 評価、ブックマークをありがとうございました!デジモンカードのデザインが好きなのでそんな風に描いていますv
2009-08-29 03:11:41 +0000