そこには何もない。漂う火薬の臭い、死臭。そこらに浮かぶ仲間と敵の死体。海底に沈んだ艤装の鉄屑。ただ流れる時間と、波の音。崩落した約束の場所。そこに眠る愛しき人の亡骸。一人残った彼女を迎えたのは、生命も無く、機関の音もなく、砲撃の音もなく、汽笛の音もなく、愛の欠片もない、死んだ海だった。黒ずんだ連装砲はもういらない。「…さあ、帰ろう…。」
2016-08-26 08:09:49 +0000