✛あなたの墓守【illust/56726338】様へ参加させて頂きます。
✛ジュビア
18歳/160cm/女 <<ピンクの髪・エメラルドグリーンの隻眼>>
一人称:あたし 二人称:あんた、呼び捨て
・昔散々悪い事をしていましたが現在は真面目に働かせて頂いています。
・言動はがさつで大雑把で乱暴、快活。表情は明るいことが多いです。左目が見えません。
・死ぬことに対しては仕方ない、という思いです。
✛✛素敵な墓守様とご縁を頂けました。ありがとうございました!
ザクトさん【illust/57686557】
いつかと同じ、雨だった。
名前が無いと言った私に、あの人がくれた、名前の日。
私の世界が変わった日。
満面の、けれどどこか狂気を含んだ微笑みに違和感を覚えた時には遅く、
腹部の鈍痛に目線を下げると、ナイフが深々と私の体に埋め込まれていた。
狂った笑い声が遠ざかっていく。
地に倒れ伏した体に冷たい雫が降り注ぐ。
流れていく赤、薄まっていく意識。
足音もなく近づいてくる、黒い装束に身を包んだ長身の男。
「こんな死に方、あたしらしいけどさ……知ってたんなら、教えとけよ…心臓にわりーわ…」
嘲笑と共にはっと一息、笑って見せる。
男は「死に方まではわからない」と呟くと、膝を折って私の体を地べたから抱き起した。
真っ黒な装束で視界が埋まる、その端でひらひらとピンクの裏地が揺れ動く。
私の髪の色とお揃いだと、穏やかに微笑んだ顔を思い出す。
「なんだ…結局、こんなもんだよな…」
身寄りも、住処も、名前すらない。
私はゴミクズと呼ばれた。
人のものは盗る、力ずくで奪う。
騙して、裏切って、必要なら体を売ったし、殴る殴られるなんて当たり前だった。
自分がゴミクズだと、ちゃんと理解していた。
それでも、そうやって意地でも生きてやることが、私の復讐。
世界への嫌がらせだった。
ゴミクズの行いを棚に上げて、最期は世界を憎んで、恨んで、呪って、死んでいく。
そういうものだと…。
視界がぼやけていくのは雨のせいだろうか。
体が冷たくなっていくのも雨のせいだろうか。
「……なあ、ザクト、あたしさ…」
なぜだろう。
両の目で見てきた汚れた醜い殺伐とした世界のほうが大きいはずなのに、
思い出すのは、左目の世界を失くしてから見てきた小さな世界ばかりなんだ。
「…あんた、そんな鎌なんて持って何者だよ、強盗なら他所行け、他所!」
初めて墓守に出会った時に投げつけた言葉。うん、今考えてもあの鎌を持った姿は物騒だった。
墓守だと、淡々と無愛想に告げた男はザクトと名乗った。
あと3か月で私が死ぬと、3か月私の好きなことに付き合ってくれると、
私が死んだあとも永劫私の墓を守り続けると…男が義務のように、使命のように告げたあの日が、つい昨日の事のように思えた。
「別に今更願うことなんかなんにもねーよ、あたしは死んで当然みたいな人間だしな」
「あんた突っ立ってるだけなら手伝えよ。……ってちげーよ!!なんだそれっ、こうすんだよよく見てろ!」
「なああんた、字書けるか?書けるなら教えてくれよ。紙と鉛筆買えるくらいの金は貯まってんだ」
「…お、おまっ…!!頭を撫でるな!!むずむずする!すげーむずむずする!!」
「いや…でも…悪くはない、な…」
そういえば、男が言っていた。
"生きる"ということは"楽しい"ということなのだな、と。
本当にそうだろうか。私がただただ生きていただけの世界では、楽しいなんて言葉は知らなかった。
それならきっと、私はその世界で死んでいたのだ。
ゴミクズですらない、屍という器すらない、存在していたかどうかもわからない。
ああ…それでも、私は知ってる。
私はちゃんと生きていた。
たった1年足らずの時を、きっと私は生きていた。
「もし、もし生まれ変われるんなら…」
瞼が重い。視界が狭まる。
ああでも目を閉じたところで、景色は同じ漆黒だ。
男の髪色と同じ色だ。
だから私は最期まで笑っていられる。
「ばーちゃんになるまで、生きたい」
その世界でなら、私も誰かを"愛しい"と思えるだろうから。
なあ、だからその時は…あんたに聞いてほしいんだ。
表情硬く、物静かに、それでも優しく、穏やかに見守り続けてくれた墓守に。
私なんかの笑顔が愛しいと微笑んだあんたに。
「だから、次は…鎌なんて…持って、くんじゃねーぞ…」
「ザクト…あたし、も… あん た の
明日、部屋から二通の手紙が発見される。
たどたどしい、美しいとはお世辞にも言えない文字で。
一通は孤児院の院長へ。
もう一通は、見慣れない名前への一文
<< I love your warm smile Sacht!! >>
2016-07-14 02:32:42 +0000