【花冠】もう一度、キミに花を贈りたい【交流】

翠火

「もう一度、一緒に蒼い月を見に行かないか?」

☑️贈った花:ヒマワリの花束、手紙を添えて大切なキミillust/57175924】へ

【勇者歴30年:12/31 蒼月の日】

人がたくさんいる場所は、どうしようもなく不安になった。
視力が悪かったから。知らない気配が多かったから。
彼女がどこかに行ってしまうような気がしたから。
でもあの時おどおどと握った彼女の手は、今も確かに隣にあって。
もう、迷うことはない。けれど、なんだか懐かしくって。

「手、つないでもいい?」
そう聞くと、その手はからかうように逃げようとした。
……………。
顔を見ると、やはり予想通りのニコニコ笑顔。
ニヤリと笑い返して彼女の手を握りしめ、色とりどりの染物がたなびく参道を二人で歩いて行った。


* * *

「キミは俺の太陽です」
「……なんてね。でも半分くらいは本当にそう思ってるよ、とても手のかかる太陽だけどな」

そう言いながら用意していた花束を手渡す。ジンクスはもう叶っているから、必要ない。
それから。と、手紙を渡そうとして待てよと手を止めた。
…これを読んでもらう前に、自分の言葉で伝えたい。

「何度も書こうとして書けなくて、うやむやにして、今日まで過ごしてきたけれど。
 本当は手紙に書こうかと思ったけど、やっぱりちゃんと言いたくて」
「……俺だって照れくさいんだから、笑ってごまかすのはナシ。一度しか言わないからちゃんと聞いて?」

「キミのことが好きです。愛しているよ、ニル」


* * *

『TO ニル

えー、こんにちは。…なんだか改まって宛名書くとヘンな感じ。
キミは宛名なんて書かなくっても勝手に貰いに来てくれてたもんね―――全く、安上がりでありがたいよな(笑)。

少し真面目な話をしようか。
俺が目覚めた時、俺は一人でした。
普通に食べ物を食べても腹は減ったままだし、かと思えば文字食えたし? それで性格変わるし? …正直、わけわかんねーよな。
素直に「お腹が空いたので文字を下さい」なんて言ったら変な顔されて騒がれたりもした。
だからこれは言わない方がいい事なんだなって知って、全部日記に書くことにした。
自分は全部日記に閉じ込めて、ずーっと、ひっそりと一人で生きていくんだってそう思っていたよ。
(ここまで書いて思ったけど、キミ日記勝手に読んだんだからこの事知ってるんだっけ? まあ俺から書くって事に意味があるって事で)

でもそうはならなかった。キミに出会った。
キミに出会って。全部知られて。諦めて。許して、いろんな自分を知れた。
それで、ずっと一人だった俺に家族ができたの。…今でも時々信じられない。
けど確かに好きな人の隣に居れて、好きな人の顔を見て「ああ、幸せだなぁ」って感じて、笑い合えて。
自分が生きる事だけ考えて生きてた男が、今は家族の心配をしてるんだよね。人生何があるか分からないもんだ。
それも全部キミのおかげだよね。癪だけど感謝はしているよ。

ありがとう。キミと…ニルと出会えて良かった。

FROM カラ』

* * *

☑️カラ【illust/57284260】30年前に贈った花→【illust/57351267

#【カカン】交流

2016-07-13 15:00:06 +0000