【人形日】似て非なる者【第四場面】

ちえみ
Preview Images1/52/53/54/55/5

■コゼット(Cossette)?
本名:××××× du  Léveillé
ココロのカケラ:4
予感:4【悲観】
たいせつなもの:8【面】
おもいだしたもの:3【炎】
ギフト:2【火の呪い】
確信:-

「どうして私は自分がコゼットだなんて言っていたのかしら……。そんな残酷なこと……どうして……?……?えっと、私、私の名前は……えっと、……そう、そうコゼット、コゼットよ。そう、そうなの……」

自分の考え、言葉、また記憶にも自信がない。
思い出したのは、自分が出来損ないであったこと。勉強も、運動もあの子には何ひとつ叶わなかったこと。祖父母や母はあの子を褒め称え、『私』に対する評価は低かった。それに不満は無かったし、役立たずな自分が悪いのだと諦めていた。烈火の如くこの胸を焼く思いには気付かないふりをした。
唯一の趣味はガーデニングと蝶々の世話。得意だった社交ダンスも、内向的な性格の為パーティにも参加せず披露する機会はなかった。
心を癒してくれたのは、不憫に思った父からこっそり贈られた空中庭園。屋敷から馬車を使わなければ行けないその場所に、気付けば毎日のように通いつめた。草花の世話に勤しみ、沢山の蝶々を育成した。しあわせだった。ここでは息をすることができた。彼女だけの箱庭だった。
今度の誕生日に新しい木を。そう、この時期にぴったりなオルタンシアの木が欲しいとねだってみようーー……。
面:所持しているが、もう二度と被らないと決めた。
火の呪い:感情が昂ると無意識に周囲を燃やす
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
■~素敵なご縁をいただきました~
不思議な安心感:ゼロ君illust/57218822

これが自分に科せられた運命なのならば、ここで死んでも構わないと思っていたのだ。
白銀の世界であたたかい何かに手を引かれたと思ったら、気付けば走り出していた。冷気を感じた後は一瞬のことで。目の前はホワイトアウトし、ほんの数秒前まで眼前に迫っていた作品の姿も、自分の両手さえも見えなくなっていた。
「……さ、寒い……。あっ、あの、助けて頂き有り難うございます。貴方様は命の恩人ですわ。っくしゅ……それにしても、きゅ、急に冷えてきましたわね……」
己を救った青年。見上げると朝霧に浮かび上がる湖のような、澄んだテュルコワーズと目が合う。
「私は、……コゼット?と申します。……たぶん。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「……?何ですか?『オー』?違う?うーん……?まる、わっか、ゼロ……。えっ合ってる?多分?……ふふ、何だ、私と同じですね。それでは、ゼロ様。貴方のおかげで助かりましたわ、改めて御礼申し上げます」
無口な青年。ふいにおしゃべり好きな少女を思い出す。鈴の音ような彼女の美声を聞くことは、もう二度とできない。後悔は尽きず、懺悔は届かない。苛立ちをぶつけるように作品を破壊して歩いた。ああ、滑稽だな。自分の首を絞めるようなことをしながら、生きている実感を得ている、私は。まだこんなにも生に縋り付いている。
「い い で す か、ゼロ様。女性を俵担ぎなど言語道断、あり得ませんわ!運んで頂いたのは感謝致しますが、せめて別の方法が良かったです……。……僭越ながら、私が殿方とは何たるかご教授致します。後学の為と思ってお聞きなさいな」
不思議な存在感をもった青年。頭を撫でる手はあたたかく、まだうまく理解できないジェスチャーや、時折見せる優しい仕草。それらはいともたやすく私の心を掬い上げるのだ。

全ての記憶が押し寄せる。
嬉しかったこと、哀しかったこと、そして。炎の熱さとも雪の冷たさとも違う、この胸を満たしたのは……春のあたたかさ。止まってたはずの熱い雫が頬を濡らす。辺りは燃えない。私はもう二度と、大切なものに牙を向いたりしない。

嗚呼……そうだ。思い出した。
どうして忘れていたんだろう。貴女のことも、私のことも。こんなにも哀しく、美しく、残酷な記憶を。
ねえ、聞いて。思い出したのよ。
私の。
私の本当の名は――

―確信【希望】を得ました―

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
■第一場面
◇犬猿の仲、ピリオド君【illust/55563625
「覚えているわ、真正面から受け止めた敵意。誰も信用できない、何も分からない状態で何故だか貴方に惹かれたの。だけど、こんなに悲しいことってある?今は……貴方に嫌われてしまうのが、怖い」

第二場面
◇憧憬すべきお方、ベルン君【illust/56247482
「覚えているわ、最初こそ戸惑った指先。貴方の微笑みは、貴方の手はとてもあたたかくて。昔日のあの子を思い出していたのね、きっと。もう、その笑顔に顔向けできる私じゃない」

第三場面
◇同族嫌悪、ロゼッタちゃん【illust/56691653
「覚えているわ、煌びやかな海の宝石。貴女との思い出はまだ記憶に新しく、炎となってこの胸を灼く。懺悔はもう口にしないわ。流した涙の分だけ、私の中の貴女が擦り減ってしまう。そんなの許されない。私が許される日なんて、来ない」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

最近のあの子、何だか妙に機嫌が良いみたい。
お父様や爺やと度々どこかに出かけているようだけれど、あれで隠しているつもりなのかしら?
本当に腹芸ができない子ね。その癖、馬鹿みたいに人を信じすぎる。
トマトソースをぶちまけて、二人で死体のふりして通行人を驚かしたのは楽しかった。それに、あの子の大事にしていた羽虫を燃やしてみたら酷く泣き喚いたっけ。あれは傑作だったわ。
炎に揺られる蝶々は綺麗だと思えたし、二、三日うなされ続けた貴女を観察できたことだし一石二鳥ね。
貧相な子。馬鹿な子。
貴女のことでわたくしに分からないことなんて、無いのに。

今度、あの子の後をついて行ってみようかしら。

#【人形日】#【人形日】女性#【人形日】第四場面#【人形日】†4#雪片家#【人形日】共鳴達成

2016-06-02 15:00:32 +0000