■かつて、新天地を支配したといわれる居城で三つ巴の戦いが起こっていた。
その中で、オハラとタイガの二勢力が争っている戦局があり、リオとムゲンはそちらに加勢していた。最後の戦いということもあり、戦いは過熱していく一方だった。
リオが隙を狙って、オハラが苦戦しているタイガ兵の一人に斬り込みに行ったが、突然影から出てきた黒刀によって防がれてしまった。
リオは突然影から出現した刀にも驚いたが、それ以上に、そのタイガ兵の男の顔を見た途端、心臓が跳ね上がって飛び退いた。
その男は鬼族の一員なのだろう、黒髪の隙間から角が生えているのが見て取れた。
昔に会った時には角は無かったように思えた。だがしかし似ていた。5年前に両親を殺した男に。
けれども。
リオ(…オハラの情報屋さんの話だと、父さんと母さんを殺したのは『キゼンの黒髪の男。』って言ってたよな…。ここにいるって事はタイガの軍勢だろうから、似てるけど違うのか…?それとも、情報屋さんの情報が間違ってるのか…?いやでも相当に実績のある人だったから、そんな筈は無いと思うけど…。)
リオが思考を巡らせている間に、鬼族の男もリオを見て若干驚いたような顔をしたが、次の瞬間には獰猛な微笑みが浮かんでいた。
食べ損ねたごちそうを、やっと食べられると嬉々する獣のように。
クチナギ「…ああ君ですか。その髪の色は覚えていますよ。一部の髪の色が違うなんて、ずいぶん珍しいなと思ったものです。食べればさぞ美味しいだろうと期待していたのですが──、君の両親を頂いている間に逃げられるとは思いませんでした。せっかく珍しい類の人間に出会えたのですから、食後のデザートにでも、と思っていたのですが。しっかり気絶させたつもりでしたが、読みが甘かったようですね。」
男の言葉に、リオは血の気が引いた。
今しがた、男は「リオの両親を殺したは自分だ。」と公言し、さらにリオも殺すつもりだったとあっさり言い放った。
とは言え、リオは納得できていない部分があった。
リオ「…俺はオハラの情報屋さんに、『父さんと母さんを殺したのはキゼンの黒髪の男。』って聴いてたんだ。ずいぶん腕の立つ情報屋さんだったから、間違った情報を得るなんて考えにくい。…あんたは黒髪なのはいいとして、ここにいるって事はタイガの人間だろ?本当にあんたが…殺したのか?」
誰を、とは訊けなかった。震える声で怪訝そうに訊くリオを見て、鬼の男は──クチナギは、ただ楽しそうに笑うだけだった。
クチナギ「その情報は合っていますよ、私も昔はキゼンの隠密衆にいましたからね。
…しかしこんなところでいつかの食べ残しに出会うとは思ってもみませんでした。一緒にいた方は親代わりの方でしょうか、大切な人も思い出もできたでしょう。肉も記憶も魂も「大切なモノ」ほど美味しくなりますからね…。いいでしょう、この際ですから魂まで喰らってあげましょう。」
そう言ってクチナギは黒い刀を構えたかと思うと、すぐさまリオに襲いかかってきた。
リオ「…お前…お前か!!」
リオは刀を振るうクチナギにすぐさま応戦したが、その顔にいつもの笑みはなく、ただ怒りの表情だけがあった。
まるで別人のように。
リオ「…お前…お前だけは許さないぞ!!」
クチナギ「別にあなたに許されなくとも良いのですがね…。黒炎、ですか。
そんなものを出しても俺には勝てないでしょうから、大人しく俺の腹収まりませんか?」
リオの刀は、いつもは無いはずの黒い炎をまとっていた。
黒炎は、それに触れた相手を殺すまで燃やし続ける、という凶悪な代物故に、ムゲンからは使用を止められ、リオ自身もその凶悪さを嫌い、今まで使ったことなど無かった。
だがしかし、今はそんな事はどうでもいい。
こいつは、この男は許さない。
少年の顔から笑みが消えるのは、ずいぶん久しぶりの事のように思えた。
■自キャラ
瞳孔開いてます。/リオ【illust/55684080】
画面外にはいるよ。/ムゲン【illust/55684286】
■お借りしました!
クチナギさん【illust/55787061】
(5年前にリオと会った時は角は出していなかった、という体で書かせてもらいました。)
突然の仇敵設定で申し訳ありません…!
特にお借りしたキャラの行動を縛ったり、レスポンスを強要する物ではありませんので、
不都合などありましたらパラレルスルーかメッセージをお願いします。
■期間中はこちらがラスト投稿になります。
色々な方の作品を見れたり、キャラを描かせて貰ったりで大変楽しかったです。
どうもありがとうございました…!
2016-04-30 15:37:43 +0000