あぐり「あ、中村さん!大切な人にプレゼントをしたいんだけど、よかったら選ぶの手伝ってくれないかしら?」
中村「すみません、早く帰らないといけないんで・・・」
あぐり「・・・あ、不破さん!!漫画好きだったよね!?今週の『シュバルツェスマーケン』だけど」
不破「私も用事があるんで・・失礼します」
あぐり「・・・はぁ・・、せっかく名前覚えたのに 誰も心を開いてくれないわ、私が悪いのかな?」
「よう先生!!気を落とすなよ!いつか伝わるって!!」
あぐり「あら、また来たのね しょうがないわねえ、私は構わないけど 学園長にでも見つかったら大変よ、君も自分の学校にちゃんと行かなきゃダメよ」
「へへへ、でも先生、このE組って、エリート階層にハッパかけるために作られてるんだってね」
あぐり「弱い子をさげすむようなやり方は、私は好きじゃないわ もっとも一介の教師じゃ学園の方針を変えることなんてできないけど」
「政府のやり方にあってるんだろうね、『一億総活躍』だの、『女性活躍』だのうたってやがるが、結局は『安い労働力としてこき使われて、富裕層に甘い汁を吸わせてあげてね』ってか?自分が負け組に落ちるのは自分の責任だ、悔しかったらはい上がれっ言うけどよ、人間ってのは分相応ってのがあるように、並の幸せをつかめりゃ、それでいいんだよ、誰もが億万長者になりたいなんて思ったら大間違いだからね」
あぐり「う、うん・・・君って案外大人っぽいこと言うのね 人の幸せは人それぞれ、誰がどのように生きていくかは自由だけど、それはその人にとって幸せじゃないとね」
「今は結婚したくてもできない、結婚して子供ができても、満足に子育てもできない、それじゃあ保育園に落とされたら国を呪いたくなるのは当然の事だね どうして匿名のブログがあんなに支持されたかといえば、それだけ辛い立場に立たされている人は多いってことだよ、ところが国会議員は『だれが書いたかわからないから、事実かどうか確かめようがない』だの、おまけに学校の校長が『女性は子供を二人以上産むのがいい』だの、まったく現場ってものがわかってねえよな 自分たちの描いた幻想に酔ってるだけで、現実を見ようとしない これじゃあ いつまでたっても格差なんてなくならねえよな?」
あぐり「そうよね、誰しも幸せな家庭を持ちたい気持ちは持っているものよ・・・」
「先生は相手が悪いダンナでもいいのかい?」
あぐり「・・・!?そういう言い方はよくないわよ!どんな人でも私の婚約者は大切な人だわ!」
「悪かったよ、その話はまたね・・・それの不満に目をそらせるためなのか知らないが、FX(外国為替証拠金取引)ってのが最近よくもてはやされてるんだけどよ、わけのわからない外国の通貨を売買して儲けようなんて、そんな考え方がまかり通るってのはおかしいよな?負けりゃ地獄が待ってるのに、なぜかやってるやつは勝つことしか考えてねえんだそうだ、もっとも現実から目をそらしているだけかもしれないがね、それが主婦やらフリーター、団塊の世代にまで広まっているのは、由々しき問題だね」
「お金は地道に働いて稼ぐものだし、勝った人の下には負けて泣いている人がいるのにね」
「『恒産(こうさん)無くして恒心(こうしん)無し』ってね、人ってのは安定した生活や財産を持って、はじめて道義心やらを持つことができる、定職がなくて安定した心を持てるのは富裕層だけ、庶民が定職を失えば、勝手気ままに悪いことをしてしまう、そうなってからその人を罰すれば、国がその人たちを罠にかけたのも同じである・・・だったか?こりゃ孟子の言葉でよかったかな?」
あぐり「・・・君って成績よくないって聞いたけど、時々すごい言葉知ってるのね、その通りだわ」
「ああ、俺は自分の興味あること以外は覚えないタチなんでね そういや先生、E組に一人来ていない生徒がいるようだけど」
あぐり「ああ、赤羽業(ごう)くんね・・・彼、教師に暴力振るって停学中なの もうすぐ解けるはずよ」
「ああいう奴は何をするかわからねえからな、気を付けたほうがいいんじゃねえか?」
あぐり「大丈夫!どんな子だろうと、いい心を必ず持っているから!私は彼が来た時は、胸を張って出迎えてあげるわ!!」
「その前にシャツのセンスをどうにかしたほうがいいけどな、最初はウケ狙いかと思ったけど、どうやら天然のようだぜ、その願いはかないそうにないけどな・・」
あぐり「なにかいった?」
「いえ、何でもFXで数億円儲けた中学生がいるとか・・・生き甲斐っていやあ、人を暗殺することも生き甲斐って言えますかね?先生 もちろん、相手は必ず殺さないといけない存在だとして」
あぐり「また急に哲学的な事を言い出したわね、どんなことだろうと人を殺すことはいけません!!」
「そうかい、案外このクラスの連中には性に合ってるかもよ!?・・・それじゃ、またね先生 ここの石頭のお偉方にも、きっと価値観がひっくり返る出来事が起きるさ、ここからな」
あぐり「もう、私がいる限り、この子たちにヒトゴロシなんてさせませんからね!今を変えられるなら、そうなるといいわね!君もちゃんと学校へ行くのよー!!」
校舎の裏でこっそり、その会話を聞いている者がいた
學峯「・・・まったく、あてつけがましい奴だ、私の教育論が覆されるなど、あってはならないことだ・・・もしあるなら、それ相応の相手に出会えるといいがね」
そして都内某所の部屋では 中学生らしい少年が朝からパソコンに向き合っていた
カルマ「やめた!!こんなんで金なんていくら稼いだって面白くもなんともないよ!!あーつまんない!!こんなんじゃ、全然人生の実感わかないんだよねー!!何かこう、熱くなるものがないもんかねえー 例えば・・『先生』を殺すとかさぁー・・・!!」
2016-03-16 11:31:48 +0000