「人形館の安息日」【illust/54961214】
二人目失礼させていただきます。
(4/14 メッセージ返信いたしました。有難うございました…!)
カノン 【UtPar-dis】
女:144cm
一人称:わたし 二人称:あなた
予感:6・憧憬 ココロノカケラ:1
たいせつなもの: おもいだしたもの: ギフト: 確信:
舌足らずに言葉を反復し、くるくると忙しなく動き回る天真爛漫な少女。
他人の表情に興味津々で、特に笑った顔が好き。
忘れてしまったことにも何か関係しているよう…?
素敵な共鳴相手が出来ました…!
躊躇う指先 マリウスさん【illust/55742003】
からんからん
とおいどこかでかねのおとがする
「どこだろう?どこだろう?」
ふと鏡に写った自分の顔。そこに笑顔をのせて
暗い館内をものともせず、目覚めた人形は歩き出します。
ちりんちりん ちりり
たてたてとった くるん
ちりん りん
とてとて ぺた
「ここはどこー?ここはどーこー?」
「きみはだーれ?」
振り返った、果ての見えない暗い廊下。
先ほど開けた放した扉の陰に、その小さな人影はありました。
「こんにちは、こんにちは」
僅かな光も反射する金糸の髪の少年。
覗き込んだ顔は水晶のような透明な瞳です。
目を丸くした少年は、一拍置いてすぐに口元に笑みを浮かべました。
「あ、にこにこ!そのおかお、すきー!もっとわらってわらって」
「わたし、カノン。きみはだれ?きみはだれ?」
彼の唇は「マリウス」と音を発したのでした。
彼はカミサマを探していました。
カミサマという誰かを探していました。
カミサマは彼の中身を、理由を持っていってしまったそうです。
きっとどこかで待っていると。
「かみさまー?なら、わたしもさがしてあげる!」
「あっちにいるかなー?ね、マリウス、いっしょにいこ!」
差し出した手のひらに、恐る恐る伸ばされる手。
触れようとして躊躇う、その指先に葛藤が感じられて、堪らずその手を包み込んだのでした。
ちりんちりん
彼の手を引き、歩き続けます。
時には振り返ってお喋りもしたりして。
ふと物音を耳にし、扉を開けるとそこは箱だらけの部屋でした。
誰かの泣く声が聞こえます。
「だぁれ?」
見つけた座り込んだドールに問いかけると、返事は歓迎の言葉と共に返ってきました。
「ティアブレイク?ないてるの?わらってわらって、…?」
きゅう
繋いだ手の中、もう一つの掌に力がこもります。
決して痛くはない、遠慮がちな掌から穏やかに笑んでいた彼の機敏が少し、伝わったような気がしました。
でも、振り返っても彼は笑っています。
「マリウス?」
「なんでもないよ」と彼は同じ笑みを返します。
「…そう?」
しかし一度感じた、胸に靄がかかったような気持ちは拭え切れませんでした。
カミサマ探しはひとまずお休みして、今度はたいせつなもの探し。
しかしいくら開けども開けども、それらしいものは何も見つかりません。
「みつからないねー」
返事の代わりに、彼はまた笑みを浮かべました。
それがどういう意味なのかとうとう分からなくなってしまいました。
あんなに好きだと思ったものなのに。
「マリウス、わらってるの?」
「いつも、この顔」とまたワラいます。
「…わらわされてるみたい」
そっとエみを形作る口元をそのままさらに押し上げて口角を上げさせます。
「そう…だね、そうかも」と、自分も今初めて認識したかのよう。
「わらってわらって!こうだよ、にこにこー」
手本にと笑って見せて、そして違和感を感じ、気付きました。
せがむこの言葉こそ、笑顔でいることを強要しているのも同然なのです。
「あ、れ。…ごめん、ね。わらわせてるの、わたし…」
「…ごめんね」
彼の口が、何かを言いたそうに開き、言葉にならず、そのまま閉じられます。
代わりに、彼は先ほど人形がしたように、自分の指で口角をあげます。
それからそっと、空気に馴染む温度の指先が頬に触れて、
まるで笑ってと言われたような気がして。
「…うん」
気付けば笑っていました。
「たのしかったらわらっていいんだよ?」
強要ではなく、彼からの行動をと考え、それを伝える事から始めました。
しかし彼は「許されてないから」と困ったように笑います。
カミサマ、かみさま、神様。
彼女にとっての「神様」はここにはいません。
「ここにかみさまはいないよ?すくなくともこのちかくには、いないんだよ?」
「でもそのひとにゆるしてもらわなきゃダメなの?」
「マリウスはどうしたい?」
「ここにはいないだけ、この先で僕を待ってる」
「僕を持って、何処かに居る」と肯定でもなく否定でもなく。
もしかしたらその通りなのかもしれません。しかし、選択の先延ばしなのかもしれません。
未来の事は分かりません。それは彼女も分かっていました。
しかしそれでは、それまで彼は、寂しい思いをするかもしれません。
なにもできないのはさみしい
なぜそう思うのかはまだ分かりませんでした。
ただ、違う遠くを見つめるような彼に、どこか寂しさを感じていることは確かでした。
「じゃあじゃあ、わたしがそのぶんわらうよ」
「ふたりでたのしいことしてたら、いっしょにわらえるかも、だよ!」
笑うことから始められれば、笑えなくとも彼が今を楽しんでくれればと、人形は気を取り戻してまた手を引きました。
「ねーねーマリウス、あそぼあそぼー!」
「だいじょうぶ!どっちがはやくあそこのはこをあけるか、だから、さがしてる、よ!ぱっかーん!」
時折、ゆらゆらと感情が揺れる瞳で、何かを言いたそうに口を開きかけては唇をキュッと結ぶ彼が目に入ります。
「こわい?」
「だいじょうぶだよへいきだよ」
「そばにいるよ」
\ぱっかーん/
―たいせつなもの【鏡】を手に入れました―
マリウスはどこかいたそうなおかおでティアブレイクをみていた
いたいの? どうしたらなおる? ゆびでふいたなみだはあったかい
なかないで まりう
手が
はなれちゃう
マリウスのゆびがびくり、とふるえて
でもてをのばしてもとどかないや
(大丈夫、大丈夫よ)
(辛いことも悲しいこともきっと終わりが来る)
.が終わらせてくれるわ
思い出せない、けれど知っている【illust/55563625】
2016-03-04 19:46:14 +0000