無縁仏に明日を見た

相摸屋 分三郎
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ある海岸で少年がひたすら穴を掘っていた

そこに通りかかった旅人が声をかける

「どうした?坊主」

「・・・ほっといてよ!!」

少年のそばには女性の遺体が横たわっていた

「もしかして、おふくろさんの亡骸を埋めるつもりなのか?」

「『オフクロサン』なんて言葉は知らないよ!!・・・僕の母さんの墓だ!!」

「こいつぁ、ひでえな・・どうしたんだ?」

「殺されたんだ!!」

「誰に?」

「この辺に住むやつらさ!!母さんが事故にあって、大けがして苦しんでるのに誰も助けようとしなかったんだよ・・・!!」

全てを吐き出すように叫ぶと、不意に少年はせき込むようにして 泣き始めた

「でも・・わかってるんだ・・僕たちが・・民を苦しめた・・王族だから・・!!でも・・でも、おじいさんはそんな暴虐な政治をやめさせようとしたし・・それで僕らも王宮から追放されて・・・もう王族とは関係なかったのに・・静かに暮らしていたのに!こんな仕打ちはあんまりだよ!!」

「・・・そうかい、色々複雑な事情がおありのようだな」

旅人は少年から板切れを取り上げた

「何すんだよ!?」

「俺が代ろう、こんなんじゃ何日かかるかわからねえ」

「そんなこと言って、僕らを騙す気だな!?」

「そう思いたきゃそう思えばいいさ、穴掘りなら俺がやってやる、あんたは・・おそらくそっちにいるのは妹さんだろうが、一緒についていてやりな・・・」

少年は黙って旅人の言うとおりにした

穴を掘り終わった旅人は母親の亡骸を少年と共に埋め、手を合わせた

「あんたらの宗派では、どういう供養を仕方をするのかは知らんが・・・後は自分たちでやってくれ」

「おじさん・・・どうして僕らに親切にするの?」

「別に・・・親切にしちゃ悪いという法律はあるめえ?」

「僕らには関わり合いにならないほうがいいんだよ、僕らは咎人(とがにん)だから」

「俺にはかかわりのねえことだ・・・人間生きていて、罪を犯さねえ人間なんていねえよ」

「ハン!あんたお坊さんかい!?僕らは特別なんだよ!!・・世界で一番不幸な人間さ!!」

「そうだろうな・・・人間、てめえが一番つらいときはそう思うもんだ 俺だって例外じゃねえ、だがよ 世の中にはもっとつらい目にあってる人間は大勢いるもんだぜ、駆け引きに下半身に所有物の烙印を押された子、遺跡から発掘されて、養女にされたはいいが家族からは『モノ』扱いされ疎まれた子、自分の親を殺されておきながら、その殺した相手に惚れ込んで弟子入りしたやつ、不幸な境遇で育っても心がねじ曲がらなかったやつと・・人ってのはその生い立ちで決まるもんじゃねえんだぜ」

「もう・・わけがわからないよ!!だったら、その子たちに会ってみたいもんだね!!」

「全員は無理だろうが・・少なくとも、二人なら会えるかな?」

「ねえ、何してるの?」

見ると後ろに女の子が興味深々に見ていた

「今しがた 仏さんを弔っていたところでしてね」

「『ホトケサン』?食べられるものじゃなさそうね」

「死んだら誰もがみなそうなるとなっておりやす、あっしらの宗派ではね」

「ふーん・・・あの子たちはどうしたの?」

「たった一人の親御さんに死なれちまったとこで、気の毒な事でござんすね」

「・・・ねえ、君たち身寄りがないの?だったら、私が面倒をみてあげようか?」

「はぁ?何で僕たちにそんな事するんだよ!?僕たちを何に利用するつもりなんだ!?」

少年は妹を抱きしめて 少女をにらんだ

「リヨウなんて知らないなぁー・・・ほら、君お腹空いてるんでしょ?きれいな顔が台無しだよ、これでも食べて元気出して」

「ムガガガ!!」

旅人が少女に声をかける

「よろしいんで?・・・大きな声じゃ言えませんが、こちらは咎人のお身内、見たところ良家のお嬢様とお見受けしますが、後で面倒な事になるかもしれませんぜ?」

「関係ないもん、私がいいって言えば誰も文句は言わないよー、それに ちょうど同い年の友達が欲しかったんだもん 君、名前は?」

「・・・ルクス・アーカディア」

「じゃルーちゃんね、私はフィルフィ フィーちゃんって呼んでいいよ、これからそうしてね!あそこに私ん家が使ってた物置小屋があるからさ、あそこなら住んでいいよ 千坪しかないけど」

「僕らに親切にするなんて・・信じられない」

「じゃ、信じるまで続けてあげる これから毎日ご飯持ってきてあげるね」

フィルフィという少女は屈託のない笑顔を見せて笑った

「ありがとうございやす、あっしは見ての通りの流れ者、先を急ぎやすので これにて御免をこうむりやす、よかったな坊主、拾う神様がいたぜ・・・」

旅人は息を吸い込むと、まるで木枯らしのような物寂しい音を出した

そして楊枝を勢いよく飛ばすと、花を一輪 母親の墓のそばへぬいつけた

そして、旅人は砂浜の向こう側へと歩いて行った

こうして数奇な運命をたどった彼らが

数年後、出会うことになるとは誰も予想しなかっただろう

運命の歯車は回り、彼らをどこへ導くのか・・・

#Undefeated Bahamut Chronicle#フィルフィ・アイングラム#Krulcifer Einfolk#リーズシャルテ・アティスマータ#Lux Arcadia#assassination classroom#Seraph of the End#意味不明

2016-02-18 12:52:25 +0000