【仁本物語弐】四方葵【第四世代】

箱籠わた。@進捗瀕死。
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◆仁本物語弐【id=52333018】
 
 
 

竹取雀の山の麓。
あれに見えるは胸に穴の空きし者。

麓で店を構えて飴を売る。
あれがなかなかウマイらしい。
けれども店主が変わり者。

菓子屋に嫁いだ娘の子らしい。
母に似て女っ気のひとつもない。

髪を飾らなければめかしもしない。
店にいなければ山を走り、
無礼者を蹴り飛ばす始末。

年頃の女子だろうに、
何処を取っても男勝り。
なにゆえあぁ振る舞うのか、
それは誰も知らぬこと。

澄ましていれば可愛かろうに、
話し方まで男のよう。

ひそひそ聞こえる井戸端会議。
誰も知らないから何も知らない話。

誰かが言った。
『女子らしくしろ』
(けれどもあの強さは我らにはない)
誰かが笑った。
『男のようだ』
(けれどもお客の足は増えている)
誰かがため息吐いた。
『あぁ勿体ない』
(けれども仕方なき理由があるらしい)

知らない癖に、分からない癖に。
この痛み、お前らも知ればいいのに。










「なんてな!! 笑顔が一番! 作ってるやつがしかめっ面してたら、来る客も来なくなるからな!!」



四方葵(よもぎ) ◆女
◇妖怪
 父方:鴛鴦の化け物、烏天狗、野狐、座敷童
 母方:雀の化け物、火の鳥、赤鬼、妖狐
一人称:俺、(私)
二人称:お前、あんた、君、呼び捨て
年齢:20歳
身長:146cm


「うちのイチオシは『蚕繭』! ふわふわそうに見えても一口食べてみれば驚きさ!」
「悪い奴は罠の道、いい奴は竹取の道。店を構えさせて貰ってんだ、悪人撃退くらいはやんなきゃな」
「髪飾り‥‥‥似合うかなぁぁぁぁぁあぁあぁぁいったぁぁぁぁぁあいてぇなドチクショォ!!!!!!」
 
 
◆家族
父:風音さん【illust/54206432
「父さんの作る飴細工はほんと綺麗だよなぁ‥‥俺もいつか作りてぇな! 一個もーらい!」
母:桜燈【id=54033524】
「母さんもそんな渋い顔しないでさぁ、なんとかなるってぇぇぇえぇ薙刀持ち出すの卑怯だ!!」
 

◆飴細工で宝石を作る鴛鴦と竹光の薙刀を振るう雀との娘。
父の菓子屋をのれん分けしてもらい、竹取山の麓で店を構えている。
一押しは『蚕繭』という繭玉みたいな飴菓子で、見た目とは裏腹に食感はサクサクで中には薄い飴で包まれた抹茶蜜が入っている。
蜜と言っても甘くなく、外の飴菓子とちょうどよくなるように、苦目に作られている。一口推奨。
胸には父血筋譲りの穴が拳大に空いており、恥じらいを感じると痛みだす。
故におしゃれ等してちょっとでも恥ずかしがると痛みだす。
母が若干男勝りだったのもあり、痛みから逃げるように振る舞い、もはや男そのもの。
それでも客足は途絶えず、座敷童の力か、案外繁盛している。
他にも自分の店に寄ってから竹取山に入る客に良し悪しを付け、道の入り口の案内をしている。
罠だらけの道に案内された奴は大体録でもない事を企んでいたり、悪人だったりする。
既に山に侵入した奴は足技で蹴り飛ばし、山から追い出す。
「悪人殴った手で菓子を客に振る舞いたくない」の信念で足技しか出さない。
髪と尾は母譲りで湿気で膨張し、両足首に片翼ずつ鴛鴦の翼が生えている。
狐の血が濃くなったせいか、狐火を起こす事が出来る。
母同様に不死性はなく、怪我したところを火で炙るとすぐに治り、病気も同様。
黄昏の空を飛ぶのが好き。
左前腕に飴細工の刺青がある。

◆❤素敵なご縁を頂きました!❤(01/29)
桃色さん【illust/54899091

―恋などと俺には鬱陶しいだけだ。

そいつは突然に。
山の連中が密やかに話す井戸端会議の噂を聞き付けたのか、そいつはやってきた。
そいつの口から零れるのは飴よりも甘ったるい恋の話。
恋の素晴らしさを説く蝶の話。

「な、いきなりなんだよ。父さんの作る飴の方がまんま宝石だぞ。まぁ、褒められるのは嬉しいけど」
「ぐっ、やめろよ、無暗に俺自身を褒めるな‥‥! 」

桃色というその蝶は、俺の作った菓子を褒め、俺自身の翼までも綺麗だと言ってきた。
そんな事を言う奴は初めてで、恥ずかしさに胸が痛む。
なんなんだ、こいつは‥‥何をしにきたんだ‥‥。

「なんだ、噺物か? それは面白そうだ、手は忙しいが耳は暇でな。是非聞かせてくれ」

それは俺とは関係のない話で、どんなに甘ったるい言葉が紡がれようと、恥ずかしくなんてなかった。
だから、俺はこいつの話を聞くのが、いつからか楽しみになっていた。

また誰かが言った。
『あの店に男が通い詰めている』
また誰かが笑った。
『ついに女らしくなったか』
また誰かがため息を吐いた。
『あの娘には勿体ないだろうに』

俺の事を勝手に言うのは構わないが、己の敷地を土足で荒らされた気分で。
井戸端会議の連中を蹴散らしたいと、初めて思った。

「俺に向かってかわいいとか、軽々しく言うな‥‥! 懲りずにそんな事言ってると、いつか店から追い出しちまうぞ!」
「‥‥ッ!! お前の口からそういう言葉がぽろぽろとよく出るな‥‥ある意味尊敬に値するな」

いくら砂糖のように甘い言葉を散らしても懲りないあいつ。
望めばどこかの誰かの物語を聞かせてくれるあいつ。
自分で言った言葉に俺が痛がれば、あいつはすぐに謝る‥‥お前が悪いわけじゃないのに‥‥。

いつからか、恥じらいから生じる痛みとは違う、チリチリとした焼ける痛みが、ぽっかりと空いた胸を焦がしていた。

「お前が謝っても、仕方ないだろ」

胸に空いた穴を、寂しそうに見ている視線を時折感じた。
お前に埋められるというのか‥‥簡単に出来る訳がないだろう。
お前自身がこの痛みを呼び起こしているというのに。
去ろうとするな、ここから離れるな、俺から、離れるなよ‥‥。
                  (私から、離れないで‥‥)
 

「俺の笑顔がみたいだと‥‥? 俺自身に構わず、お前の話を聞かせてくれればいいんだ‥‥」

「好きだんて、俺はこんなに痛いのに、お前のせいで、お前のせいで‥‥!! だったら、愛してるっていうなら、お前が俺の番になれよ!!」

 

胸に痛みを生じさせたのも、その胸の痛みを取り除いたのもお前だった。
もう胸の痛みに怯えて逃げる必要もない。
桃色に握られた手を、握り返す事が出来る。

 
 
「あぁ! 一生分の恋を、しよう‥‥桃色と、私で!」

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2016-01-26 20:44:29 +0000