はじめて見た時は女かと思った。それもとびっきりの美女。真っ白な肌は夜兎の私でも驚くくらいで、黒く長い髪はつやつやして、なんだか紫に光っているようで、天人の頭上を跳び越える姿はしなやかで。強烈だった。
でもその人が銀ちゃんの幼なじみで爆弾魔、しかも男だったからとっても驚いた。おまけに頭はだいぶ抜けていて、知れば知るほど、驚いたり、呆れたり、……少しドキドキしたり。とにかく飽きない男だった。
銀ちゃんがその人を「ヅラ」と呼ぶので、なんとなく私も真似した。そう呼ぶとヅラはムキになって毎回テンプレートなセリフを返してくる。
なるほど、銀ちゃんはこの反応がみたくて彼をズラと呼ぶのか。
ヅラは私のことをリーダーと呼ぶ。きっかけはなんだかすごいくだらないことだったと思うけど、ヅラが「リーダー」と呼ぶのは私だけだし、私を「リーダー」と呼ぶのもズラだけだから、この呼び方は気に入っている。
銀ちゃんはズラが好きだと思う。だからズラも銀ちゃんが好きだと思ってた。だから諦めてた。でも、見てしまったのだ。
いつだったか町をぶらぶらしてて、奥の路地にズラがいて曲がり角にいる誰かと話していた。相手の顔は見えなかったけど、わずかに見えたのは派手な紫と黄の着物。その姿が角を曲がると、ズラは怒ったような、困ったような顔をして一瞬……。
あれはダメだ。あんな顔。“好き”の種類が違う。私や銀ちゃんには見せたことのない顔。
あぁかわいそうな銀ちゃん。私よりずっと前から好きなのに。あれはもうあきらめたほうがいい。
だから……
「ズラはマミーみたいアルな。」
「父上ではないのか?」
「パピーとはちょっと違うネ。ズラは私の地球のマミーアル。」
「そうか。心得たぞ。俺は今日からリーダーの母君だな。」
私にできる限りの鎖であなたをしばる。私のところに。
「よろしくネ。マミー。」
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高桂←銀時前提の桂神楽です笑笑
2016-01-24 11:23:10 +0000