見てみると、辺りはほのかに光る泡のようなものが浮遊している。
女は以前、何かの書物でそれが「アニマ・オーブ」なるものであると記述されていた事を思い出した。
「綺麗……」
思わずそう口にして、そっと一つ、手の中に収めてみる。熱を発しているわけではないのに、どことなくそれは温かみがあった。
「私の目には見えませんが、あなたが仰るのならきっと美しいのでしょうね」
「ええ……あの、グレディアさん?」
「何でしょう?」
「あ、あの、その、お手が……」
傍らの男の手は、カゲロイの肩をしっかり抱き寄せている。その熱とグレディアとの距離に、カゲロイは頬を染めずにはいられない。
「いえね、せっかくなら、お互い近くで見た方がいいじゃないですか」
「グレディアさんはその、お目が見えぬのでは……?」
「ふふ……方便、というヤツですよ?」
「あ、あなた様という方は……ッ」
思わずアニマ・オーブから手を離し、その顔は男の目には見えぬという事を忘れ、カゲロイは袖の中に紅い顔を隠した。グレディアの小さな笑い声がカゲロイの耳をくすぐり、それがまた羞恥を強めた。
そういえば、グレディアには自分には聞こえない、どこからかの愛の囁きが聞こえるらしい。
一体どういうことであろうか……。
「……グレディアさん」
「はい」
「その……よろしければ、私に、声の正体を知るお手伝いをさせていただけませんか?」
*お借りしました*
・グレディアさん
編集中……
2015-12-26 05:01:11 +0000