ナリタブライアンの苦悩

フォンテン

皐月賞、東京優駿を次元の違う走りで圧勝したナリタブライアン。同世代では もはや敵はいない。
一方、古馬のGⅠ・天皇賞、宝塚記念を圧勝したのは、前年の年度代表馬である兄のビワハヤヒデ。
巷では、年末の有馬記念での兄弟対決が 否応なしに盛り上がっていた。

兄の弱点は瞬発力であることを 俺は知っている。そこを衝けば必ず勝てる。
しかしだ。俺は兄を倒してもいいのだろうか。兄のプライドを打ち砕いていいのだろうか。
幼い頃の俺は 臆病で、いつも兄の影に隠れていた。兄は、いつでも強く、俺を守ってくれた。
俺には、兄を傷つけることなど できようはずがない。

そして 兄は思う。現時点では、まだ弟に負ける要素はない。
四角早めからスパートすれば、スピードの絶対値が違いすぎる。
しかしだ。大いなる素質を持った弟の心を ここで折ってしまっていいものだろうか。
それだけではない。菊を制し三冠馬となっていても、弱い世代の中でだけの最強馬として、評価は大きく下落するだろう。
有馬記念は、俺が負けねばならぬか・・・。

秋、天皇賞に出走した兄は、圧倒的一番人気を背負いつつも、いつものスピードは影を潜め、生涯はじめて連を外す5着となる。
レース中に屈腱炎を発症していたのだ。
兄は、有馬記念に出走することなく、そのまま引退となった。

ナリタブライアンは、菊花賞も圧勝し、三冠馬となると、兄のいない有馬記念に出走。あたりまえのように完勝した。
しかし、そのレースぶりは、ジョッキーが 抑えるのを無視し、暴走気味に前へ前へと向かっていった。先行したであろう兄に競りかけるかのように。
そして直線。さらに加速し、他馬を置き去りにするナリタブライアン。果たして、彼の目に映る兄の幻影を抜き去ることができたのであろうか。

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2015-12-05 19:39:32 +0000