ここが沼かよ…

あくた
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恵比寿西口、目の前にあるビルの地下にあるバー。カウンターから眺める広い水槽にはたくさんの白い海月がふわふわと浮かび、客を楽しませている。まだ日も完全には沈み切っていない時間帯には人が少なく、静かな店内に響いた足音に振り返り、冠城は笑顔で軽く手を上げる。「随分と早いですね、日下部さん」「丁度時間が空いたからな。一時間ほどで出る」「相変わらずお忙しい」「お前は随分余暇を楽しんでいるようじゃないか」カウンターに腰かけ、隣の冠城をちらりと見やる日下部は柔和な表情だが、裏に潜む隠しきれない威圧感にたじろぐ者のほうが多いだろう。しかし冠城は慣れているのか、苦笑しただけでその視線を受け流す。「灰皿もってきてもらいますね」「いや、いい」「あれ?禁煙ですか」「お前のいない間にな」そう言って日下部はカウンターテーブルに置き去りになっていた灰色のメニューを開くこともなく、店員にビールを注文する。冠城は大げさに目を見開き肩を竦め、懐からジッポライターを取り出してわざとらしく指で弄ぶ。「じゃあもうこれ持ってる必要ないですかね、日下部さん用ですし」「…お前な」悪戯っぽく笑う冠城に、目を細めてから日下部は軽くため息をつく。「まったく、人を乗せるのが上手いやつだ」「いやあ、親しい人が俺の知らないところで変わってるの寂しいじゃないですか」「そう思うなら早く戻ってこい」「もうちょっとだけ」呆れた声を作ってはいるが、どうやらこのやり取り自体を楽しんでいるらしい日下部は、それ以上言及することなく。しばらく鞄の中に放置していた煙草を取り出したのだった。    (みたいなやりとりがみたいだけの人生だった)(ついでに今日くらげバー行ってきました)

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2015-10-21 14:33:54 +0000