「おかえりなさい。シュイロ、アイイロ」
鮮やかな色のホーネットは咥えていた石の粒をぽとりとキアラの手に落とした。
それは長い間砂塵の奥に隠れていた、魔力をほんの少し含んだだけの魔石とすら呼べないような石の粒。偵察のためにと無数に戦場に放たれたホーネットたちが、集めてくるようにプログラムされていたもの。
ざらり、と音を立ててそれらの礫が魔力を閉じ込める特殊な硝子瓶のなかで揺らぐ。ひとつひとつは石粒にすぎなくても、数百数千にも及べば話が変わる。
「幾千の魔力が触れ合い、混ざり合い、喰い合って。少しずつ“何か”に変質していく。そういう呪いが、どこかにあるんだってね」
ざらり。
瓶の中の幾戦の魔力が大きく渦を巻いてうねる。百足のような影がほんのひととき、中で揺らめいたような気がした。
「これも、誰かが綴った、古い古い呪い。対価と引き換えに敵を掃い、道を示す。……そうね、同じね。あるいはわたしの存在もきっと、呪いみたいなものだわ」
【狂い礫(くるいつぶて)】
特殊な瓶の中に数多の魔石の欠片を閉じ込め、互いに魔力が混ざり合い影響を与え合うことで変質させることで生まれる呪具。大きさは手のひらに収まるほど。
身に着けている間、攻撃するための魔法に限り発動速度や威力を大幅に強化するが、その間持ち主の魔力と生命力を喰い続ける。
また、持ち主に「探しているもの、望んでいるもの」がある場合はそれに向けての道を指し示すとも言われている。
あまり長く身に着け続けていると命を脅かす場合もあるので注意。
作った人:【illust/49703529】
◆企画元:PixivFantasiaT【illust/49662235】
2015-09-26 20:08:41 +0000