「よーし。…こんなもんか。」
少年は自分の服装を一通り点検し、満足げに頷いた。
「……ちょうどいいところにバカな連中が通りかかってくれて、助かったぜ。」
口の端をあげて酷薄そうに笑う。彼の周囲には移動機械…であったものの残骸が炎を噴きあげ、そこかしこに無残に切り裂かれた死体が散乱している。一人で荒野を彷徨っている少年を見つけて、いいカモだと思ったのだろう。問答無用で襲い掛かってきた荒くれ者たちはしかし、その対価を身を持って支払うこととなった。
今彼が身に纏っている衣服や道具はすべて、彼らの荷物の中にあったものだ。
「さすがにあの格好じゃ目立って仕方ねえからな…………っく!!」
薄ら笑いを浮かべたまままだ何かないかと物色を続けていた少年は、急に顔を歪め、頭を押さえてぐらりとよろめく。
「……っ……うるっせえな……人を殺したぐらいでぴーぴー泣くんじゃねえよ、ガキが!」
ぎりっと歯ぎしりをしながら、少年は毒づく。周囲には誰もいないが、それは誰かに語りかけているような口調だった。
「くそっ……頭ン中でわめきやがって……」
少年は、ふらつきつつもゆっくりと立ち上がりながら考えを巡らせる。
(……まさかこの状態でも完全に意識が消滅しねぇとはな……誤算だったぜ。)
旧く強大な力を持つ彼の力に、ひよわなあの少年の自我では太刀打ちできるはずもない。一度主導権を握ってしまえば、この体はすぐに彼のものになるはずだったのだが。
(……もしかして、あの胸糞悪い『杖』が何か仕込みやがったか…?)
少年が肌身離さず持っていた杖。
少年自身はそのことにちゃんと気づいてはいなかったようだが、あの『杖』には意志が宿っていた。そしてその意志は、メイジアで彼がこの体に憑りつこうとした時から、事あるごとに彼の邪魔をし、支配を阻んできた。
(手放しちまえばもう問題ねえだろうと思ったが……あの時、ちゃんと破壊しておくべきだったか)
今からもう一度あそこに引き返して杖を破壊しようかとも思うが、またあの連中と鉢合わせすることになっても面白くない。
「まあ…時間の問題だろ。」
彼は呟き、頭をふってふーっと息をついた。頭痛はほぼおさまっている。
「さて…と。」
どこまでも続く荒野を見わたし、満足げに少年は笑った。
「いいね……この世界はどうも、俺の性にはぴったりだぜ。」
軽く手を振ると、少年の周囲に激しい風が逆巻き、ふわりと少年の体を浮かせた。
「…『強化』の特性ね。なかなか使い勝手がいいな、この体は」
一つ一つ、確かめるように体の動きを確かめる。
(これなら、身体能力を『強化』すれば当面はしのげそうだな。…まあ、とはいえ少々鍛え直さねえとこのままじゃ使い物にならねえが)
彼は心中で一人ごちると、額に意識を集中する。
ぞろり
と鈍い痛みと違和感が一瞬走り抜け、次の瞬間、彼の脳裏に遥か遠方の風景が映し出される。
「……どうやらあっちにずいぶん人が集まっているみたいだな」
少年は風を操ると、その方向へと向かう。
真紅の瞳には、闘いへの抑えきれぬ興奮と狂気が浮かんでいた…………
ルツillust/49806015が魔の者に意識を乗っ取られた姿です。シェザと名乗ります。
こちらillust/52173543(「なりたいもの」)で襲ってきた魔物がこちらillust/52550896(「なまえを、よんで」)でルツの意識を乗っ取りました。
使っている肉体はルツのものなので、魔法の特性である「活性」はそのままですが、中身が違うので、水魔法ではなく風魔法を操ることを得意とします。
戦闘の際にはルツの特性である『強化』を利用して身体能力をドーピングして肉弾戦を行うほか、風を鋭い刃と化して何もかもを切り刻みます。
シェザ自身は人を殺すことも何とも思っていませんが、人を殺すと中にいるルツが激しく抵抗して大きく体力・精神力を消耗してしまうため、続けて殺戮を行うことは困難です。(シェザはまだ、この問題を軽視しています。)
とりあえず戦闘に餓えているので、激戦区に向かいます。
なお、ルツが所属させていただいておりましたはらぺこ兄弟同盟illust/49687417さんからは離脱させていただいておりますが、物語的に今後もできたらからませていただければ…と考えておりますので、もしもご迷惑でなければ引き続きタグはつけさせていただければ幸いです。(もし問題あるようでしたらご指摘いただければ外します!)
『早くはらぺこの皆さんたちのもとに戻りたいよお……(ルツ談)』(T△T)
シェザ自身は公式NPC『異界を渡る邪悪』に従う存在であり、『異界を渡る邪悪』が今後再び姿を現した際にはそれに伴い活動を開始すると思われます。
このため、公式NPC支援悪役ギルド「メラン・ウーロボロス」illust/51163447さんに所属させていただきます。^^
急展開で、関わってくださっている皆様にご迷惑をおかけしてまことに申し訳ございません!
引き続き物語を紡いでいきたいと思っておりますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします!
素敵企画「Pixiv Fantasia T」illust/49662235
何か問題などございましたら、お手数ですがメッセなどでご一報ください。
2015-09-20 10:38:12 +0000