イブキは腕を掴まれた。
「お嬢ちゃん1人かい?」
…現地の人間だろうか?知らない顔だ。
腕を掴んできた男はニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべイブキへ話しかけてくる。
だが、あぁ、この人あまり良くない人だ。と、イブキの勘がそう告げた。
「ととさんと一緒です。」
そう言い、とにかくこの男からは離れなければならぬと、強引に掴む手を振り払い逃げるように街の奥へ走った。
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この世界に来る際、手違いがあったのかイブキは共に旅を続けていた友達のサクと離れ離れになってしまった。
見知らぬ、さらに人も自然も全て世界が荒廃し疲弊した土地に1人だけというのは、いつも威勢の良いイブキでも心細く感じるものがあった。
「ととさんは一緒じゃないよ。」
先ほど咄嗟に出た嘘を独り言で訂正し、家出したことを少し後悔しながら行くあてもなく街の中をトボトボと歩いた。
イブキ(illust/49665015)
2015-09-02 14:48:20 +0000