怪我人を救護し、どうにか結界で魔物を食い止めようとしていた私たちの目の前に、
突然見覚えのある獣が躍り出た。
「あなたたち、ファーランド島で会った…!!」
どうしてここに?と言い終わらぬうちに、二匹の狼は女の子をここに残し、次々と魔物たちに飛びかかっていく。
「単独の狩りは骨が折れますわね。」
「ルイーズ、お前は主様から離れ過ぎないように。私はあちらを仕留めに行く。」
「わかったわ、兄様。」
私が呆然と見ていると、不意に手を握られた。
狼達から“主様”と呼ばれている不思議な少女は、魔物たちに囲まれたこの状況でも怯えることなく、
まっすぐ私を見つめて言った。
「だいじょうぶ、ヌエが助けます。」
ヌエはおもむろに小さな金色の実を取り出すと、それを地面に埋めた。
小さな声でなにか呟くと、それに応えるかのように実を埋めた場所から金色に光る芽を出し、みるみるツルを伸ばし始めていく。
いったい、これはどんな魔法だろう…。
私はこの場が危険な状況であることも忘れ、その不思議な光景に見入ってしまった。
「……なんだ、これ。」
ふと、ブレンダンの呆然とした声が聞こえ、我に返る。
慌てて目線を上げ、そして驚愕した。
ブレンダンが描いた結界の陣が、まるで植物のツルのように変形し、四方に伸びていく。
ブレンダンの意思ではないのは、その表情からわかった。彼のこんなに驚いた顔を見るのは初めてだ…。
その魔方陣に呼応するように草原のあちこちから金色のツルが伸び、魔物たちを絡み取ってゆく。
あれは、コガネツユクサのツルだ。高純度の魔力を持ち、金属の性質を持つ頑丈なツルは、
魔物の動きを封じるのには十分な働きを見せている。
ふとブレンダンはヌエをじっと見据えた。
「君が僕の術式に干渉したのか。…これは魔法?…違うよね。
君たちも別の世界から来たんだろう。“船”とやらで来たのかい。」
別の世界、という言葉にどきりとした。
今のこの騒ぎの元凶も異世界の者がもたらしたものだという、それならこの子は…。
「君は何者?何の目的でここへ来たの?」
ブレンダンが言葉をつづけた。
ヌエは私たち見つめながら、微笑んで言った。
「ヌエは、ともだちを助けに来ました」
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◆こちらの設定をお借りしました!→オペレーション グリーンハンズ【illust/51074586】
◆キャラクターをお借りしました
ラバグルドさん(小さくてごめんなさい…)→【illust/50766776】【illust/50666827】
自然の報復者→【illust/50663094】
キャラクター:ロミーとブレンダン アイテム:コガネツユクサ→【illust/50935442】
ヌエとお供のヒューゴ&ルイーズ【illust/49682916】
企画元様→【illust/49662235】
2015-07-05 02:39:20 +0000