【illust/49906725】
『――――TIME OUT』
どこから発されたのか。まさかこのタイミングを見計らっていたのか。そうも思えるほどのタイミングで鳴り響く電子音。それと同時にまるでフォーミュラマシンが目の前をトップスピードで通過するような耳をつんざく甲高い音がハイネの耳に響くと、目の前にいた『少年』は、いつのまにか『青年』に変わっていた。
「―――――――ッ」
涙と鼻水とよだれがぐちゃぐちゃになった顔で士は眼前の向日葵に抱きつく。
その泣き声は数十分止まらなかった。
まるで迷子の恐怖から解放された子が母親に泣き付くように。自らを縛る全てを洗い流すように、涙は流れる。
ハイネはそれを拒まず、優しく背中を撫でる。
その優しさが嬉しくて、嬉しくて、ただただ流れる涙。
前述の数十分後。男の胸でおいおい泣きじゃくったことを恥じらったのかしばらく真っ赤な顔でそっぽを向く士。それにハイネが溢した『プッ、』とつい出てしまった笑いで言葉の火蓋は切られる。
「……ンな可笑しいかよ」
「フフッ……いや、やっと戻ってくれたと思って」
「Shit………世話、かけたな」
「そうでもないさ。親友だろう?」
「……そう、だな。」
光が差した筈の顔に再び影が戻る。
「どうした?」
「……ハイネ。あの二人と……イツキによろしく頼む。俺は少し、頭冷やしてくる」
脳裏に浮かぶのは、幼馴染みの影かかった顔。
「本当にありがとう……お前には救われてばっかりだよ。」
「……どこかでケジメをつけてこいよ」
「わーってら。俺を誰だと……いや、誰でもないか。」
◆◇◆◇◆◇
兄貴【illust/46325776】
多分ハイネになら抱かれてもいいとか思ってる【illust/46356954】
時間経過とは関係なく士自身が元の自我を確立させたので元の精神状態と身体に戻りました。ハイネからのカウンセリングがなければ少なくともあと半年は元に戻らなかったでしょう。(はじめてのフォーミュラなのでまだ身体が馴染んでいないこともあり。)
次回。姉【illust/47636085】、動く。
2015-04-21 08:42:19 +0000