前回載せた時は展示の最中で、あまり良い写真が取れなかったため高画質のものを再度アップする。コンセプトなどの詳細情報もここに記述する
●基本的なデータ
タイトル:「その路地の向こうで」
サイズ:F100号×2(1620×2615mm)
支持体:キャンバスを2枚繋ぎ合わせたもの
画材:油絵具
制作期間:2014年8月〜2015年1月
展示:卒業制作展
●コンセプト/テーマ
空高く聳える巨木、未だ嘗て見たこともない生物群。そんなものはない、非現実的だ、と決めつけていないだろうか。それは、私たちの知っている世界を基準に考えているからだろう。
しかし、私たちの知らない摩訶不思議な世界は「不思議の国のアリス」やジュール・ヴェルヌの「地底旅行」、様々な童話や小説、また、絵本や映画などで語られている。それは、作り話ではなく、体験談であるからとは思ったことはないだろうか?
私たちの暮らす世界の果てには、訪れたことのない摩訶不思議な世界が確実に広がっている。それは、遠い宇宙の彼方にある惑星、あるいは私たちの細胞核の中という人間の目に見えないものの中かもしれないし、もしかしたら、私たちの日常生活に共生していて、私たちが気がつかないだけで、実はそこにあるのかもしれない。
そんな私たちの知らない、「世界の端」の断片を描いたのがこの「その路地の向こうで」である。その世界は、本当は私たちの生活の傍らに、こっそりと口を開いて、私たちが迷い込むのをただ、ひたすら、待っているのかもしれない。
普段は単なる小道の路地に、見慣れない風景がある。本来そこにそんなものがあっただろうか?記憶にはない。しかし、今ここにこうして存在している。行ってみようかな、と思わせるような、でも少し怖いなと思うようなあり得ない空間。それが人の「迷い」であり、入ってしまったら、物理的に「迷い」込むことになる。この絵はそんな迷いを描く作品である。
この絵は、私が今まで描いてきた非日常の世界と日常の世界とを繋ぐものであり、ある種の入り口を担っている。既存の作品を総括して繋がりを与え、更に、今までと違ったサイズ、また、今まで描いてこなかった「日常」という部分を描くことに挑戦している。
というのも今まで私が描いてきた絵の中に、「迷い込んだ少女」を描いたものがいくつかあるが、迷い込む瞬間を描いたことはなく、どうしたら「迷い」や物語を表現できるかを考えた末、「迷い」を描くためには、「迷い込む場面」が必要不可欠であるという考えに至った。だから、「日常」というものが必要不可欠であり、全ての作品の集大成として描く作品であるからこそ、今回描かなくてはならないものであった。
この作品を見てから、他の私の作品を見たとき、そこが空想世界ではなく、日常の延長線上に存在していると感じて頂けたら幸いである。それがこの作品の大義であるからだ。
2015-02-03 10:45:52 +0000