「—ボクは、もう増えなくていいんです」と、少年は言った。
“暗闇の山地”の洞に声が静かに谺する。
息を潜め隠れ住む“欠片の従者”たちが穿ち築いた集落—
多くの仲間は狩られ、また欠片の止まらぬ侵食に息絶えていき、
いまや虚ろな洞となり果てていたが—少年は独り、そこに生きていた。
「父も母も、兄弟や、あの子たちも…皆みんな、ボクの中にいますから。
ボクの強過ぎる侵食力も、これ以上は必要のないものです。
戯れに身体を撫でてやった、あの獣が都で暴れてしまったというのなら
あの獣には可哀相なことをしてしまいました。あぁ……都の人たちにも—」
少年は独り、そこに生きていた。
仲間の遺骸を取り込んで。抑えきれない力を持て余し。
『—ここへは狩人や冒険者が入り込まないよう、入口を隠しましょう。
貴方には少しの間、寂しい思いをさせてしまうけれども…』
暗闇から少年とは別の声が響く。姿は見えない。
助かります、と少年が微笑みながら応える。
ふと、少年の額に暗闇から伸びた手が重ねられ、刹那、目映い蒼惶が閃くと
洞は再び、告解のあとの沈黙に似た静寂に包まれる。
心ない洗礼は済まされ
少年は少年の身体の中の星の欠片を対価に以てして
少年は少年の身体の中を全て偽星の輝きに変えられた。
少年は独り、そこに生きていた。
二度と同族を作り出すことの出来ない生き物となって…
闇が何かを囁くと、髪を撫でる手が頬を伝い唇をなぞりながら離れて、消えた。
◆“心ない洗礼”
星の欠片(または欠片の従者)を媒体とし、“心ない星”【illust/21638857】に造り変える対価魔法の展開。
対象となった星の欠片(ないし欠片の従者)は“心ない星”同様に侵食活動を行わず、他の星の欠片に侵食されない特性を持つ。
尚、“心ない洗礼”は直接対象に手を触れられなければ効果を得られず、
この対価魔法では一度、造り変えた“心ない星”を元の“星の欠片”に戻すことは出来ない。
使い手【illust/47371566】
■企画元【pixivファンタジアⅣ】http://p.tl/i/8481158(本期間終了済)アフターhttp://p.tl/i/9966545
2014-12-19 07:47:27 +0000