<紅茶はいかがですか?温まりますよ。>
(はい、どうぞ。ふふ、喜んでくれてる。嬉しいなぁ
疲れてる時暖かい物を飲むとホッとするもんね。)
<ごめんなさい、私喋られないんです。>
(筆談もどかしいなぁ…字、書くの遅いから飽きられちゃわないか心配…
あ、けど字は綺麗って褒められたのがちょっと自慢。嬉しいなぁ)
(私のご先祖様のお話、自分の欲の為に子供に枷を背負わす、とか
愛しい人の為にそこまで出来るのは素敵とか賛否両論だけど…
私はこのお話好きだなぁ。
きっと彼女は自分と彼と、自分の子供を信じたんだろうな。
だからこそ今私がここにいるんだよね。)
(私の声ってどんなのだろう?聞きたいような、ちょっと怖いような…)
◆名前:マグノリア(女/18歳/154cm)
◆所属:水の部隊
◆ステータス:Main:10 Sub生命力:0 Sub運:0 (合計10ポイント)
◆id:47379164 末尾:4
◆スキル
・魔女の契約:魔力を得る代わりに声を失う。愛した人と想いが通じ合えば声は戻る。
その時に本人の意思とは関係無く涙を零し、その涙が結晶となり魔力の元となって
子へと引き継がれる。
子は生まれた時から声を出す事が出来ない。
・しゃぼん水晶:水晶の代わりにしゃぼん玉を浮かせて、そこに少し先の未来を写し出す。
自分や近しい人の未来は見る事は出来ない。
・魔女のお茶会:飲むと癒しの効果がある紅茶。色々なフレーバーを取り揃えています。
昔、大魔女と契約して魔女になった人間の末裔。
その時の契約の効果で声を出す事が出来ず、もっぱら筆談や身振り手振り。
いつもにこにこしていて、疲れてる人、癒しを求めている人を見つけ出しては暖かい紅茶を振舞っている。
良い香りのする旦那様
ザスリアンさん【illust/47392242】
ぼんやりと佇む男の人を見つけたのは偶然だった。
こんな所でどうしたんだろう?
少し心配になりマントの端を軽く引っ張る。
驚いた様子で男の人が振り返ったと同時に、優しい花の香りがふわりと漂った。
凄く良い匂い…!
香水かな?紅茶にも同じ香りがあるけど、こんなにも雰囲気が変わるんだなぁ。
物想いにふける私に男の人は怪訝そうな顔で声をかけてくる。
<ごめんなさい、どこか具合でも悪いのかと思って。>
紙に文字を書いて見せると、男の人は柔らかく微笑んだ。
まるでさっきの香りみたいに、私の心に入り込む。
<ザスリアン、いつもクッキーありがとう。とっても美味しいよ。>
何か事あるごとにザスリアンとお茶を飲むようになっていた。
ザスリアンはいつも私が出す紅茶にぴったり合う物を用意してくれる。
もっと味の感想や、今日あった事、ザスリアンの事。
色々聞きたいのに、筆談がもどかしい。
待たせちゃいけないと焦ってペンを走らせる私に、急がなくていいよ、と笑いかけてくれる。
本当に優しい人なんだなぁ。
(えっ、えっ、僕達の子供って…え!?)
驚いて口をぱくぱくさせてる私を見て、ザスリアンは笑い出す。
あぁ、びっくりした、冗談か…
あれ、けどどうして私がっかりしてるんだろう?
毎日のようにザスリアンと色々な事を話した。
筆談でしか伝えられない私の事を、ゆっくり待っていてくれる。
ザスリアンのアロマや、私の紅茶の効果ではない別の物で心が暖かかくなっている。
私はザスリアンの事が好き。
自分の気持ちをはっきり自覚すると同時に、魔女の契約が頭を過ぎり不安になる。
もし願いが叶わなければ、私は1人で生きて行くの?
けど私の気持ちは溢れてきて止まらない。
ザスリアンはどんな答えを返してくれるんだろう。
もし、もし願いが叶うのだったら、私は貴方の名前を最初に呼びたいの。
今日はいつもより身体が大分楽だった。
私は厄災の影響で病気がちになり、寝込むようになっていた。
心配する夫と子供達を外へ追い出したのは少し前の事。
結婚してからも子供達が産まれてからも変わらず優しいザスリアン。
慣れない看病での疲れが溜まってるようだから気晴らしになって欲しいな。
子供達も退屈してたしね。
2人の子供達の顔を思い出して思わず笑みがこぼれる。
2人はどんな大人になるのかな?
幸せな人生を歩んで欲しいな。
手に持ってたコップの紅茶を一口飲む。
温かくて幸せな香り。
そしてその紅茶が手からすり落ち、真っ白な布団に茶色の染みが広がっていく。
コップは床へ音を立てて転がり落ちていった。
ああどうしよう、今日は大丈夫だと思ってたのに…もしかして私…!
気持ち悪くて苦しくて、声を出す事が出来ずに自分の身体を抱き締める。
いつの間にこんなに細くなったんだろう?
私、このまま死ぬの?
ザスリアンと子供達を置いて?
いや…そんなの嫌…!
私、ザスリアンに大切な言葉を伝えきれてない。
子供達に母親らしい事をまだしてない!
まだ、生きていたい…!
すぅっと厄災が私を捕まえたような気がした。
自分の名前が悲痛な声で呼ばれている。
薄っすら目を開けると、泣きそうな顔をしたザスリアンと子供達が見えた。
ああ良かった、最後に会えて…
大事な言葉をゆっくり口に出す。
ザスリアンが抱いている私の身体をもっと強く抱く。
子供達も縋り付いてくる。
私は、あなた達に出会えて良かった。
魔女じゃなくなった事に後悔なんてしていない。
あのままだったらこんな愛しい気持ちなんて知らなかった。
魔女の契約は下の子に継がれたけど絶対に大丈夫。
どんどん意識が遠のいて行き、ザスリアンの手を握り締めた。
きっと弱々しいけど、私の精一杯。
アロマの優しい香りが私を包んでいるような気がする。
ザスリアン、私はとっても幸せだったよ。
本当にありがとう。
愛してる。
◆企画元:ただ一つの
【illust/44307098】
遥か大昔、魔女狩りにあって家族を失った女がいました。
彼女は大粒の涙を零しながら、大魔女に願い事をしました。
《どうか奴等に・・・人間に復讐出来るように魔女にして下さい》
身寄りの無くなった彼女を大魔女は可哀想に思い、その願いを聞き入れました。
人を憎む彼女でしたがある時、一人の人間の男に恋をしてしまいました。
彼と一緒に生きていきたいと思いましたが、魔女になった彼女は同じ時を過ごせません。
彼女は再び大魔女に願い事をしました。
《お願いです・・・私を人に戻して下さい》
それを聞いた大魔女はこう言いました。
《一度交わした契約を破棄する事は出来ない》
《だがしかし、お前にチャンスをやろう》
《私はお前の声を貰う》
《その声を失った状態でその男と想いが通じたら声は返そう》
《契約はお前の子に受け継がれ、お前は人になる》
《だが想いが通じ合わなければ・・・お前は一生魔女のままだ》
2014-12-02 22:35:00 +0000