冬彦は薄暗い部屋の中で目が覚めた
「ここは・・・!?」
確かペコと一緒にオシオキに巻き込まれ 自分はペコの太刀を受けた後 記憶がなくなった
気が付いたらここにいた 顔にはまだ傷があった その証拠に右目が見えない
「・・・そういえば ペコは?」
向こうで明かりが漏れていた それは光というよりは火だった
そこで見たものは・・・
磔にされたペコだった 二人の男がペコを磔にし 花札を的あてのように投げていた
「ハハハ!おっしいな!ま よけてなかったら刺さってたとこだがな さあ 今度は俺たちのうちどっちに賭ける?外したら今度は目隠しして投げるぜぇ!!」パーカーのフードをかぶった男がペコに言った
「まさか わざと負けてるわけじゃないですやろ?」中年と思われる異形な顔の男が言った
「んなわけねえだろ 今度は負けねえぞ もうブタは引かねえ」
「おい!!てめえら ペコに何をしやがる!!」
「これはこれは冬彦ぼっちゃん お目覚めですかな?いや 何ね ちょいとした遊びですよ」中年男が笑いながら言う
「遊びだぁ?ペコをこんな目に合わせやがって・・てめえら殺してやる!!」
「ほほう・・」
「待て・・俺がやる」パーカー男が前に出た 顔を見ると冬彦と同じ年のようだが あるいは年下か? そんなことは関係ない 俺のペコを傷つけたやつは誰であろうと許さねえ
「遠慮はいらないぜ けが人だからってケンカができねえわけじゃないだろ?」
「上等だぁーー!!」
冬彦は手加減せずフード男に怒りの拳を叩きこんだ
しかし得体のしれない反撃を一発受けただけで動けなくなった
「ぐっ・・何だこいつ・・・」
「さすが九頭龍組の跡取り 強いじゃねえか」男がフラフラしながらも言う
「そりゃあ もう・・」中年男が言う
「まだ・・まだだ・・俺は負けちゃいねえ!!」冬彦は体を押さえて立ち上がった
「坊ちゃん!いけません!!こいつらは・・・!!」ペコが叫んだ
「さすがやのう・・・渋いぜ大将 そういう人間に 二度と俺とやり合う気がなくなるように徹底的にやっておかないとな・・・おい!」
「うわあ!!」中年男が念じると急に体が動けなくなった
フード男は冬彦に刀を握らせ 中年男はペコに刀を握らせた
「な、何をする気だ!?」
「楽しいことさ」
そして二人は冬彦とペコの手を取り、二人の体を互いにつき続けた
「うわああああー!!!!」二人は痛みで絶叫した
「ハハハ どうでえ!!これがほんとのお突き合いってもんさ!」
「やめろ・・・やめてくれえ!!」
「・・ぼっちゃん!!やめろぉー!!」
「そいつぁ因果だねえ♪・・・そいつぁ 因果だねぇ♪お前が殺意なんて持たなきゃこんなことにはならなかったのによ もしかして妹の敵を殺したのもお前じゃねえのか!?」
「うっ・・・」
「違う!!それは、私がやった!!」ペコが言う
「なぁーにぃ?」
「坊ちゃんは妹さんの敵を討ちたいとおっしゃっていた 坊ちゃんの手を汚すわけにはいかなかった だから私がやったのだ!!」
「グハハハ!!まさかの二回目かい!!かわいい妹の敵か おめえの妹も兄の前じゃあ いい子ぶっちゃいるがな 実は親の権力を笠に着て人をいたぶる鬼畜よ それゆえ ぶっ殺されたのさ 外面如菩薩 内心如夜叉(げめんにょぼさつ ないしんにょやしゃ)ってやつだな」
「そんな・・・!!」妹の顔が目に浮かぶ 笑顔のかわいい子だった 兄想いの子だった そんなあいつが・・・なんてこった! 冬彦は改めてショックに打ちのめされた
「わかったかい?世の中にゃ 知らぬが仏ってこともあんのさ そいつぁ因果だね そいつぁ因果だね♪本当に 因果だな お前らってやつはよぉ!!ギャハハハ!お前ら一族呪われてんよ!!」フード男が狂気とも言える声で叫んだ
「ううっ・・・頼む・・ペコだけは離してやってくれ」
「ああん?」
「ぼっちゃん!」
「その通りだ 今まであったことは全て俺のせいだ 妹も小泉もペコも俺のせいで・・ペコは生まれた時から『道具』として育てられたのは俺のせいだ だから・・ペコだけは許してくれ!!」
「残念ながら坊ちゃまよ それだけじゃあねえのさ 全てはあんたのじいさんから因果の歯車が回ってたのさ・・」
「じいさんの?どういうことだ」
「それについてはまた後ほどな 実はな こちらのお嬢さんには覇王の血が流れている どこぞのブリーダーさんとは大違いだぜ」
「何を言ってやがる!?」
「さあ 目覚めろ封印されし血よ!!そして自分を『道具』にした九頭龍に復讐するのだ!!」
ペコの目に明らかに異様な光が宿り それが炎となって燃えた
そしてペコは刀を振り上げ冬彦の頭に振り下ろそうとした
「ペコ・・・」冬彦はあきらめたように笑った
「ペコ・・俺はな お前が好きだったんだ・・・」
「!?」
「おいおいおい!!この状況で告るたぁ どんな漫画だ!?」フードが冗談っぽく言ったが 怒っているようだった
「ずっと俺の『道具』として使われるお前が不憫だった・・だから 俺が独り立ちしたら 俺の『嫁』に迎えるはずだった・・・お前に手を汚させたのも こんなことになったのも全ては俺の不徳!!さあ やってくれ!!その代わり元のペコに戻るんだ!!おい!!俺の命をくれてやる!!だからペコを解放しろ!!」
「そんなことはできねえな・・・」フード男に動揺が見られた
「できねえはずがねえだろう!!」
「・・・む!?てめえ!!何してやがる!!」フード男が驚いた
見るとペコは冬彦の額に手を当てた そこから青白い光が生じていた
「ペコ!」
「まずい・・やめさせろ!!!」フードが取り乱したように言う
中年男が数珠をペコの首に絡め 締め上げる
「・・・坊ちゃんの記憶を消去する!!」
「ペコ お前!!」
「いいんです こうするのが一番いいのです!坊ちゃんは組を継いでいかなくてはいけない大切なお方 私の事は忘れるべきです!!坊ちゃんはここにいるべき人間じゃない!!坊ちゃんを今すぐ元の世界へ戻すのだ!!」
「やめろ!!やめろ!!お前の事を忘れるなんて そんなのは嫌だぁあああーー!!!!」冬彦は泣き叫んだ
「さようなら・・これが最後です 坊ちゃん!」
その時 空から金色の光が降り注いだ そして空から何かが舞い降りてくる
「・・・鳥が!?」男たちは驚いているようだった
そして冬彦は光の中へ吸い込まれていった
男たちはしばし呆然としていた
やがて中年男が口を開いた
「・・・こういうことをするのはわしの役目のはずですぜ?」
「やっちゃ悪いか?」
「そうは言いませんが・・」
「嫌ならいつでも俺の元を離れるがいい 俺は構わん」
「いいえ・・・あんたはわしのギャン(指導者)ですから」
「ふん・・・鳥が来た するとあいつは・・どうやら『カ』に導かれたな これから楽しみが増えた 俺はもう島へ戻るぜ 後は任せた いてて・・さすがに効いたな」フード男は顔をさすりながら側のドアをくぐった
2014-11-03 08:34:02 +0000