オタクの矜持

相摸屋 分三郎
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被害者と思われた山田は実はクロであった

ジャスティスロボを作った塗料が山田の部屋から発見されたこと、ロボにさらわれたにしては いささかポーズが不自然すぎたこと 石丸の手に彼を呼び出したメモが握られていたこと そして眼鏡の血がきれいに拭き取られていたことだった

「残念だったよ・・さすがにそこまで頭が回らなかった そう僕がやったのさ もっとも最初はあの女に犯行を持ち掛けられたんだけどね 土壇場で裏切られるとは 組む相手が悪かった・・・それ相応の報いは受けてもらったけどね 昔 辺古山道場で剣道を習ったのが役にたったよ」

「山田クン・・君は石丸クンがセレスさんに乱暴したと彼女から吹き込まれたんだろ!?」苗木が言った

「そんなことはどうでもよかったんだ 僕は・・本当に出たかったんだよ ここから アルターエゴと一緒にいられるなら何もかもがよくなったんだ」

「そんな・・!」

「君たちにはわからないだろうね 僕の気持ちなんて・・・小さいころからデブだのキモイだの言われて・・そんな自分と付き合ってくれる女の子がこの世にいると思うかい?だったら もう相手は二次元しか残ってないじゃないか・・・でもアニメや漫画に出会ってからは また違う価値に気づいたんだ・・・僕が同人誌を作り始めたのはね・・ただ趣味の押しつけみたいに感じてるだろうけど 違うんだ みんなにその作品の良さを知ってもらうためなんだよ」

「・・・」

「だけど・・誰もそんなことはわかってくれなかった みんなキャラクターに萌えることしか考えてなくて その作品のことなんてだあれも考えちゃいない 僕はそんな考えが嫌いだった だってそうだろ 今はそのキャラが好きでも飽きたらまた次のキャラに乗り換える そうやってキャラクターを使い捨てにしていくのが我慢ならなかったんだ それを作り上げた人たちの苦労も知らないで!そしてマイナーで見向きもされないものにだって名作はあるんだ 僕はその名作をリバイバルし、パロディにしてでもその作品を残していきたいと思ったんだ だけど それをすればたちまちブーイングの嵐・・・僕のファンとか言ってたやつらはとたんに手のひらを返して僕を叩きに回る もう この世には・・誰も『作品』の価値のわかる人間なんていないんだって思ったのさ 同じファンでさえ もうわかるやつなんていないんだ・・だけど アルターエゴだけは僕の話をわかってくれた 彼だけは素直に僕の話を聞いてくれ 馬鹿にもしなかった!!僕が彼さえいればそれでいいと思ったのは当然のことさ!!同人誌売った時みたいに もう周りが敵でもいい 僕はただ 『作品』を守りたかっただけなんだ・・君たちに・・僕の・・気持ちなんて・・・死んでもわからないだろうね!!」山田は泣いていた 本当に世を憂いての嘆きの涙だった 苗木たちは何も言えなかった その時・・

「んー あたしは豚足ちゃんの気持ちはわかるねぇー」ジェノサイダーが言った

「あたしも腐川も芸術を作るものとしては 作品の価値のわからないやつらなんてホントーに生きる価値なんてねーと思うし そんなやつらは三枚におろして 細切れにして 魚の撒き餌にでもしてやりたいと思うよね 魚のウンコにでもなれってカンジ?誰になんといわれよーと あたしたちはそれが『最高』と思ってやってるわけだし ただ取り巻きが欲しいだけなら そんなもんは芸術家とは呼ばねえっつーの!せいぜいケツの穴ほどの小さい世界で満足してりゃいいさ 真の芸術は凡人には理解できねーもんだからね 後はそれが1点とかマイナス123469点とか評価されようと 胸を張ってればいいんじゃね?どうせ自分の好き嫌いとか 評価でしか人を判断できないような奴には一生かかってもわかんねーわけだしさ 後になって評価されることだってあんだろ?ゴッホみてーによ あたしももしかしたら百年後にはキリストみたいになってるかもしれないと思うとゾクゾクすんねえー ギャハハハハ!!」

「殺人鬼でもわかってくれるならそれで十分だ・・・一人でも・・それも人間じゃなくても 僕の気持ちをわかってくれるなら それで十分なんだよ・・もうとことん この世には絶望したんだ・・世界一を誇った日本のアニメや漫画は もう死んだんだ・・・」

「山田クン!!」苗木が叫ぶ

「ごめん・・!!オレがもっと山田クンの話 聞いてあげれば良かったと思う・・アニメの話はよくわからないけど・・君の言いたいことはわかる!!誰にでも守りたいものがある そういうことだよね!?ただそれを僕らはオタクと決めつけて排除しようとした そんな考えは改めるべきだと思う・・それも大切だけど・・他にもあっただろ?価値のあるものが!!・・・僕らの友情だよ!!」

「友情だって?笑わせないでよ 今更僕がそんなもの信じるとでも?」

「そんなことないよ!朝日奈さんを見ただろ!?あの時 君が息を吹き返した時・・朝日奈さんは泣いてた 君のために涙を流してくれたじゃないか!!」あの時山田は暗い闇の淵の中にいた その時空から一つの光る雫が降り注いだ・・それで山田は闇の淵から戻ってきたのだった その雫が朝日奈の涙だったのだ

朝日奈も涙を流しながら言う

「そう・・あの時は山田が生きていてくれて本当にうれしかった!!それは本当だよ!!例え・・クロでも山田は私たちの友達だよ!!」

「ま あたしは友情わとかかんねーけどさ わかりたくもねーけど ぼっち度じゃ腐川に劣るけどさ こんだけの人間にわかってもらえるんなら あんた幸せじゃねーの?あんたの心意気 感心したよ 今度からあんたのような男も磔リストに入れることにしようかね うんうん」ジェノサイダーは自分で感心しながら何度もうなずいた

山田はしばらくうつむいて考えていた だがふと決意したように顔を上げた

「もう・・遅いんだよ もう・・僕だって男だ・・素直にお仕置きは受けるよ でも・・これだけは言わせてもらうよ・・日本のぉおおおおお!!!!!アニメとおおお!漫画はあああああああああ!!世界一ィイイイイイイイ!!!!!」山田は渾身の力で叫んだ 自分の全身全霊を持った魂の叫びであった

「山田クン!!」

モノクマはもう飽きたという風に鐘を鳴らした

「まったく主役の僕を差し置いて熱く語っちゃって・・・オタクにも三分の理ってやつ?僕には全然わかんないけど では はりきってお仕置きいってみましょうー!!」

『ぶー子とお花畑』

山田はぶー子たちとお花畑で楽しく遊んだ それこそ何もかも 時間すらたつのを忘れて お仕置きされた者たちの中では 彼が一番幸せだったかもしれない・・・

すると・・・驚くべきことが起こったのである

モノクマさえ首をかしげていた

#dangan ronpa#Hifumi Yamada#naegi makoto#asahina aoi#Genocide Jack#monokuma

2014-10-25 13:06:18 +0000