日本陸軍 試製手投火焔瓶

たまや C101土曜東ア30a

一、概要
 日本陸軍が開発した火焔瓶は、当初ガラス瓶の中に燃料と発火剤を入れ、戦車に命中した衝撃でガラス瓶が壊れて、同時に発火剤の容器も壊れて化学的に発火する方式を研究したが、取扱いが不便だったため、缶に燃料を入れて信管をつけた方式と、サイダー瓶に燃料を入れて信管をつけた方式とを比較研究することとなった。 燃料は、陸軍科学研究所第二部で開発した「カ」剤を使用、容器はサイダー瓶、信管は常働信管の形式が宜しいということになった。こうして試製されたのが「試製手投火焔瓶」であったが、サイダー瓶は命中精度が不良であり、これと同じ容積で背丈の低い瓶が適当であることがわかり、制式の瓶としては、この高さ140mmの瓶を採用することとした。但し、信管を装着する口金は、サイダー瓶でもビール瓶でも装着することができたので、これらに信管を装着して容易に急造火焔瓶を製造することができた。手投火焔瓶は、手投煙瓶と共に陸軍歩兵学校及び工兵学校の実用試験を経て実用に適するとの判決を得、昭和18年7月19日に制定された。(『第1回陸軍技術研究会、兵器分科講演記録(第1巻)』アジア歴史資料センターref:A03032065000 83画像、『工兵入門』267~269頁)
二、構造及び使用
 制式採用されたものは全重量は540gで、うち火焔剤240gである。投擲距離は約5mで、火焔持続時間は約1分であった。
 使用目的は、火焔を戦車内部に侵入せしめ、機関部に火災を誘起させることである。効力は、ガソリン機関の戦車機関部に数箇を連続投擲し、火災を起こさせるほか、戦車の前面に投擲して一時乗員を制圧することができる。
 使用に当たっては、まず缶入り火焔剤を十分攪拌混合し、付属のじょうごで瓶の肩部まで火焔剤を注入する(口元まで一杯に入れない)。次にパッキンの緊密度を点検して信管を瓶にねじ込む(信管の保護蓋は装したままとする)。組み立てた火焔瓶を箱で運搬する場合には、中蓋を除去し、蓋のみを用いるようにする。余分の口金及び信管は、応用瓶に使用するものとする。口金は、パッキンを点検した後、瓶口に当て、木片等で強く押し込む。
 戦闘に際し、攻撃前進に移るとき、まず信管の保護蓋を抜き捨てる。次に目標に近づき(目標との距離8m位まで)、信管の安全栓を引き抜き捨てた後、機関部上面等の堅い所を狙って投げつける。続いて2本、3本と投げつければ効果大である。この際の注意点としては、安全栓を抜いてから地面に落としたり他物に衝突したりしないこと、安全栓を抜いたもので不要になった場合は、遠くに投げつけるか、又は他の方法により危害予防に注意して処分することである。
三、取扱上の注意
 取り扱い上の注意及び携行法としては、まず、信管をサイダー瓶等に附し、急造火焔瓶とすることができる。火焔剤は、揮発油を主体とするものであるが、制式の火焔剤がない場合は、揮発油とジーゼル油とを同量で混合したもの、又は揮発油と重油とを同量で混合したもの、あるいは揮発油のみでも目的を達することができる。また、極寒期においては、制式火焔剤1に対して揮発油1の割合に混合したものを使用する。信管は、なるべく火焔剤中に漬けないようにすべきであり、このため火焔剤を瓶の口部まで充満させず、且つ携行中もなるべく口部を上方にするよう注意する。携行にあたっては、紐で腰に結びつける。

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2014-09-15 16:18:59 +0000