ホン提督は、チヒロサン製薬のスタミナドリンクのキャップを力なく開けた。彼女の瞳は死んだマグロめいており、顔色も悪い。ラベルにプリントされた「健康的」「中毒性がない」「天然、それが安心」といった欺瞞の言葉を見ても、最早何の感慨もわかなくなっている。 1
チヒロサン製薬の滋養強壮ドリンクには違法成分が含まれており、一日一本ならば何の問題もないが、オーバードーズは大変危険である。大変危険なのだが、彼女が一息で飲み干したスタミナドリンクは、この日十本目だ。 2
机に突っ伏している秘書艦の金剛も、実際疲労困憊であり、先程から「ニンジャ戦士……特に宇宙……」などと意味不明なモージョーを呟いている。その時である。「ドーモ、お疲れのようだな、提督=サン」何者かの声。「ドーモ、貴方は……憲兵=サン……」ホン提督は鋼鉄メンポの兵士を仰ぎ見た。 3
メンポには恐怖を煽る字体で「憲」「兵」の二文字が禍々しく彫金されている。「二人ともセルフ管理メントがなっていないな。疲労困憊でイクサは出来んぞ」「うー……ペン=チャン、連戦の無理が祟ったみたいデース……」呆れ気味の憲兵に金剛がズンビーめいてしがみつく。 4
「やれやれ……金剛=サン、艤装を外してソファーに横になれ。少し疲労をとってやろう。……いや、服は脱がなくていい」「ヨロシクオネガイシマース」金剛は脱ぎかけた服を着直し、艤装を外してソファーに突っ伏す。「では、ゆくぞ……イヤーッ!」「ンアーッ!」 5
ナムアミダブツ! 憲兵はジュー・ジツの奥義、セータイを極める! 金剛の体に走る激痛! 「我慢せよ、金剛=サン。痛いのは最初だけだ。イヤーッ!」「ンアーッ!」再び上がる悲鳴。だが憲兵の言ったとおり痛いのは最初だけであり、金剛の苦悶の表情も、次第に恍惚の顔へと変わっていく。 6
「提督=サン、次はオヌシの番だ」そして、今度は提督に死神の宣告が! 「痛いの?」「疲労の程度による」「……いいえ。わたしは遠慮しておきます」逃げようとするホン提督! だが憲兵はそれを見逃しはしない! 7
「慈悲はない」「ヤ、ヤメロー! ヤメロー!」憲兵の腕が容赦なく提督を拘束し、そのままセータイを極める! 「イヤーッ!」「アバーーーッ!」鎮守府にホン提督の絶叫が響き渡った。 8
2014-08-14 14:53:21 +0000