【C86新刊サンプル】一〇〇式機械信管「加」構造図

たまや C101土曜東ア30a

夏コミ新刊に収録予定の図面です(仕上がりは原寸大、B5本見開き)。
画像では2色になっていますが、予算の都合上最終的に墨刷りになります。
以下説明の一部。
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一〇〇式機械信管「加」   昭和16年6月28日 陸密第1823号制定
一、審査の目的及び用途
 本信管は、火道信管の企及できない低圧・長秒時(約50秒)かつ精度良好な曳火機能、及び一般着発信管における着発機能を併有させる目的で審査した時計信管である。等斉纏度の火砲においての発射衝力重量1gあたり5kg以上一分間の回転数5000以上の火砲弾薬に使用できるものである。
二、構造及び機能
1.構造上の特徴
 本信管は、時計装置を利用する時限信管である。精度の増加並びに使用範囲拡大のため、主要部品、特に調整歯輪の重量を極度に軽減してその固着法を堅固にしてあるほか、各分画測合機構を正確にするため、信管体外筒を改良した。また、地上射撃に使用できるように着発装置を併有させてある。
 本信管の時計機構は、克式機械信管と類似しているが、始動装置及び発火装置の機構を簡単にしてあり、安全を確実にするような構造とし、部品数を減少して製作を容易にした。即ち、始動はガンギ車の拘束を解除することにより営ませ、圧定筒により作用の確実を期し、かつ逆鉤により発火機能を営ませる点において著しく克式とは異なっている。
2.構造
 本信管は、信管体・外筒・尖帽・緊定環・時計装置・圧定筒・点火管・活機・遠心子及びこれらの部品等より成り、時計装置を除くほか概ねアルミニウム合金製で、重量約520gである。
 別に防湿のために黄銅もしくは鋼製の着脱帽を有し、かつ1箇ずつ信管筒に収容する。
 信管体は本体・撃針・蓋螺及び塞螺等より成り、上部に時計装置を結合ボルトにより連結し、下部に点火管・活機及び遠心子を収蔵する。外周には信管測合基線を刻み、駐釘を附してある。
 時計装置は下層装置・中層装置・上層装置・撃針・起動装置・結合ボルト等により成る。
 下層装置は体・振子・規正子・遠心子・ガンギ歯車・第二歯車・第一歯車並びにその部品、中層装置は体制動軸・制動ばね・制動子軸(下端近くにガンギ歯車止を有する)・制動子・同ばね、上層装置は体・逆鉤・逆鉤ばね・歯止歯車等をもって構成する。
 撃針及び撃針ばねは時計装置の外側に近く附属されている。起動装置は起動軸・くさび・連結板・動子・起動ばね・同室及びその部品より成り、時計装置上方に位置する。外筒は外周に信管分画を刻み、上部に圧定筒を結合し、上方に尖帽を螺着する。そして、時計装置を保護するように緊定環で信管上部に緊定する。緊定環は緊定ばねを介して外筒の旋回を防止する。
3.曳火機能
 起動ばねを巻いてある時には、起動ばねの力は起動軸・第一歯車・第二歯車・ガンギ歯車に伝わるが、ガンギ歯車止がガンギ歯車に噛合しているため、時計は作動しない。
 弾丸が発射されると、その衝力により制動軸は降下し、制動子はそのばねの抗力により旋回し、ガンギ歯車止はガンギ歯車の噛合を解き、時計は作動する。
 一方、圧定筒もまた発射衝力により降下し、くさびを打ち入れることにより起動軸と動子とを結合し、かつ連結板と外筒との連結を解く。従って時計作動するや起動軸の回転に伴い動子は逆鉤に対して回転する。
 逆鉤は、その中間に撃針頭部を鉤している。逆鉤ばねにより常に内方に圧迫されているが、制動軸先端によりその移動を妨げられていると共に、逆鉤先端が動子面に接触しているので移動することができず、従って撃針は逆鉤より離脱しない。これとは別に、遠心子は撃針の下方の凸起部に結合し、その降下を妨げているが、弾丸旋動が付与されると遠心子はそのばねを圧迫して外方に開き、撃針との結合を解き、撃針に前進可能の姿勢をとらせる。
 次いで測合秒時に至ると、動子の缺切部は逆鉤と正対し、その突入を可能にするので、撃針は逆鉤より離脱してばねの力により雷管を衝き、点火管及び底部管薬を経て起爆筒に点火される。
 上記の通りから分かるように、本信管は遠心子のほか制動軸・逆鉤・動子・圧定筒・ガンギ歯車止等の諸部品により安全装置を形成するものであり、信管を着発分画に測合しておいても安全を期することができる。
 信管分画の測合にあたって外筒の信管分画を測合基線に一致させるときは、連結板及び動子は外筒と共に旋回し、動子の缺切部を逆鉤に対して所望経過秒時に応じる角度だけ偏位させるもので、また時計装置の各種歯車振子の規正子等は起動軸の回転を規正するものである。
 本信管は信管分画を40分画に測合したとき、静止状態においては40.5±0.2秒であり、毎分16000回転の回転状態においては38.5±0.3秒である。
4.着発機能
着発分画に測合してあるとき、逆鉤は動子の駐子に支えられている。このため、発射により時計が作動できる状態となっても、動子はこれに従って起動軸は回転することができない。故に、最後まで逆鉤が動子の缺切部に吻入することなく撃針は突出することができない。これは、曳火安全機構の一部として着発分画を記述してある理由である。
一方、活機は常時遠心子により進出を阻害されている。弾丸旋動を付与されると、遠心子は外方に開き、活機の進出を可能にする。弾丸飛行間は活機ばねもため後方に圧下されている。弾丸着達するや、活機は慣性力のため進出し、雷管は撃針に刺突して発火する。これは、一般着発信管と同じである。
三、取扱保存法
 1.本信管は、内部に精巧な時計装置を収蔵し、かつ十分に規正してあるので、取扱いを丁寧にし、特に撃突・落墜等を避けると共に、みだりに分解してはならない。
 そして、常時着発分画に測合し、起動ばねを全巻(約12回転)の上保存してあるので、使用にあたって起動ばねの巻上げは必要としない。
 2.着脱帽は、なるべく使用直前に離脱する。また、一度離脱した場合でも使用しない信管を生じたときはなるべく速やかに装着するものとする。
 3.信管は、図のように着発に装置してある。曳火分画を得ようとするには、信管測合器をもって外筒を矢標の向きのように右廻しにし、所望の信管分画を基線に一致させる。そして、大分画に測合した後で着発分画を経て再び小分画に復帰することはできないので、超過分画の訂正は捩廻(左廻)した後、分画測合する必要がある。
 4.分画を測合した後で使用しなかった信管は、着発分画に戻して着脱帽を装着しておくこと。着発分画に戻すためには、外筒を左廻りにして着発分画を基線に一致させる。この際、前述のように大分画から着発分画に復帰することはできない点に注意する必要がある。

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2014-08-08 15:02:15 +0000