潜対空攻撃型核融合潜水艦〈せとしお〉

YONEDEN

潜水艦は「沈む」のではなく「潜る」ものですよねえ。有川浩さんの「クジラの彼」にもありましたが。

というわけで潜対空攻撃型核融合潜水艦〈せとしお〉です。計画時には1万3000トン型潜水艦と呼称され、核融合動力で駆動、エイのようなヒレで推進します。ヒレ推進による静粛性の向上とともに、画期的な潜望鏡タイプ・アレイマストを使ったイージス艦なみの対空能力をもつガンフィッシュ潜対空ミサイルにより、潜水艦にアーセナル艦能力と沿岸域特殊部隊進入能力を追加という無茶な兵器です。
 確かに天敵である対潜哨戒機さえ追い払えれば潜水艦はほんと、チートな兵器なのです。艦艇の対潜戦能力なんて、どんなに頑張っても潜水艦には不利なのです。しかし対潜哨戒機に対抗できる潜水艦はなかった。一時ロシアの潜水艦が小型ミサイルをセイルに搭載して哨戒機に対抗しようとしたらしいのですが、哨戒機は投下したソノブイでめぐらした広大な探知網をもっています。潜水艦が浮上して発射する兵器で戦う前に、その浮上作業中にあっさり沈められてしまう。哨戒機が気を抜かなければ勝ち目なしですし、それだったらそんなムダなものをもつより静かに潜むほうが得策だった。
 それが潜水深度のまま、戦域データリンクで察知した対空目標にミサイルをバンバン打ち上げて攻撃できるのです。対潜機もこれはびびる。まして普通の航空戦力なら、対潜機を随伴してても伏兵していたこの潜水艦の射程圏に入ることになれば勝ち目はない。ソノブイを投下して配置する前に狙い撃ちされてしまう。
 とはいえこのガンフィッシュシステムを持つこの潜水艦も弱点はいろいろあるのです。まずミサイル発射のためにはわざわざ発射可能深度まで浮上せねばならず、また戦域通信システムによる対空目標共有ができなければ、自分からアレイマストを上げにさらに浅い深度まで浮上せねばならない。もちろんその間にブスッと対潜哨戒機に対戦魚雷で仕留められる確率はガン上げしますし、さらにそのリスクを背負っている割に複雑な兵器システムなので調達価格も上がり、数を揃えられない。ゆえに開発・運用も複雑化し、その費用も割高になってしまう。
 そしてそのリスクを背負うなら、おなじプリンセス・プラスティック世界なのですから、女性型女性サイズ戦艦「シファ級で十分じゃん」クラッシュを食らうという最大の悲運が。この世界では画期的な兵器がいくつも登場しますが、全部この「シファ級でいいじゃん」でかわいそうに作中でお蔵入りしてしまうのです。なんという酷い世界。そりゃシファたちの開発運用チームは恨まれますよねえ。
 というわけで物語はそれも推進力となって進むのです。

#SF#架空#future#military#プリンセスプラスティック#submarine#weapon#fictional ship

2014-07-27 15:32:41 +0000