【PFFK】岐路【アフター】

まきつぐみ(旧ちゅうこ)

大分時間が経ってしまいましたが、ヨモギとたまのピクファンアフターです。
長いので、前半後半と分けています。こちらは前半です。

直前のおはなし(illust/43220786

後半のおはなし(illust/45115436

ヨモギとたまのプロフィール(illust/41949428

※物語かなり長いのでご注意を!

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

謎の女性騎士の助けを得て戦場を無事に抜け、安全な場所にたどり着いたヨモギとたまは安堵の表情を浮かべ
同時に深いため息をつきました。

ヨ「よかった…無事に生きて脱出できて」
た「ああ、あのお嬢さんの助けがなければワシら今頃戦場の屍のひとつになっとったな」
ヨ「うん。でもさ、あのひと気になることを…。
  …たま?」

た「・・・・・・・・・」
たまは遠くを見るような目をして動きません。

ヨ「…たま?どうしたのさ?」
ヨモギは少しだけ不安になって小さく尋ねました。

しばらくしてゆっくりヨモギの方を振り返って、たまは言いました。
た「キボウジュ…」
ヨ「えっ?」
それはあの女性騎士が言ったことばでした。
(これは…キボウジュの種子)
どくんとヨモギの心臓が跳ねました。

た「思い出したのじゃ…ワシ…」
「ワシ…帰らなければならない」
ヨ「えっ…どこに?どこに帰るのさ?」
た「最初にお前と遭うた場所じゃ」
ヨ「それって…」

ふたりは二日かけて、ふたりが最初に出会った黒あざみの森へとたどり着きました。
静かな旅でした。
戦場を抜けてからほとんど人とも遭わず、ふたりの会話も必要最低限。

本当のところ、ヨモギは怖かったのです。
たまの雰囲気がそれまでとは少し変わって、何か尋ねれば返ってくるのは
暗い宵闇色の絶望のような気がして、うまくたまに話しかけられないのでした。

森に入ってすぐにヨモギは気づきました。
(おかえり)
(おかえりなさい…)
(はやかったね)

たくさんの何かが微かに話しかけてきます。

そしてふたりが出会った時とは、森の色がまるで違うのです。
森のすべてのものがわずかに金色を帯びて、まるで全体が大きく光っているようでした。

ヨ「みんな祝っている…」
た「そうじゃ。みんな待っておったのじゃワシらのことを。」
ヨ「あ…!」

振り返ったたまの背にひときわ大きな、それはそれは立派な金色に輝く樹がそびえ立っていました。
ヨモギは上から下まで、樹のすべてを視界に入れてから尋ねました。

ヨ「たま…キミは何者なの?」
どくん、どくんと鼓動が早まります。

た「ワシは…あのお嬢さんの言った通り、この希望樹の種子じゃ。」

た「役目を果たすために記憶を封じておった。
  じゃが、役目はもうじき終わる。お前にはすべてを話さなければならないのう。」

ヨ「や、やくめ?何なの?オレたまに何か騙されてたの!?」
少し身構えて言いました。

た「いやいや…黙ってワシの話を聞くのじゃ。」
ヨモギはしぶしぶたまの話に耳を傾けました。

た「ワシらは、希望樹と呼ばれる…。千年に一度種を落とし、そばにいた者に寄生する。
  そして共に行動し、共に得た経験を糧に成長する。
  やがて種子は花を咲かせ、母樹に帰り、新しい芽となるのじゃ。」

た「お前と共に過ごす間、自分の記憶は経験の邪魔になるから封じておったのじゃ。」

ヨ「ふぅん…」
なんだかやっぱり騙されていたみたいで、釈然としないのでした。

た「そんなぶすっとしとらんと、最後まで聞くのじゃぞ?」
ヨ「・・・・・・・(ぶすっ)」

た「樹が光っておるじゃろう?これは、お前と共に歩いて戦って、冒険してきた証なのじゃ。」
ヨ「…!」
た「経験というものは実に高純度なエネルギーで、ワシらはこの輝きで次の千年を十分に生きていけるのじゃ。」
「そして、余った分を宿主に還元する。」
ヨ「?」

た「ワシらが希望と呼ばれる由来じゃな。さて、ヨモギお前の願いをひとつ言うがよい。」
ヨ「???」
た「つまりワシらは経験と引き換えに宿主にひとつだけ願い事を叶える義務があるのじゃ。」
ヨ「…え!!?」
突然のことに面食らいましたが、ヨモギは少し考えて言いました。

ヨ「その願い…叶えたら、たまはどうなるの?」
た「お前の元を離れ、新しい芽となって根付くのじゃ。
  つまり…もうお前とは一緒におれん。」
たまは少しだけ、申し訳なさそうに微笑みました。

ヨモギは顔を赤くして憤って言いました。
ヨ「やっぱり!なんだか嫌な予感がしてたんだ。
  そんなの…!今までずっと一緒にいたってのに…。」

(あれ…?)
ヨモギはあることに気づきました。
ヨ「もし…もしオレが、たまがこのままずっと…」
た「ヨモギ!!」
ヨモギの言葉をさえぎってたまが叫びました。

た「お前は…本当にそれでよいのか?」
ヨ「…!!」

た「あのお嬢さんの言っておったことを忘れたか?」

(どうして戦うの? ――――――大切なものを守るためです)
(あなたにもあるでしょう?人は皆何かを守って生きているわ…)
ヨ「…!」
た「お前の本当に大切なものは…どこにあるのじゃ…」

そう言われてヨモギの脳裏には、こっちの世界に来る直前に姉に言われた言葉がよみがえってきました。
(村を…森を頼んだわよ…ヨモギ)
ヨ「オレ……オレ………っ」
うつむいたまま、振り絞るような声でヨモギは言いました。
ヨ「たまお前っ…こうなることわかってたのかよ…!!」
たま「…さあのう」

ヨ「オレは…オレは、村のみんなも、たまもどっちも大切だ…!」

声に嗚咽が混じってきらきらと涙が光って地面に落ちました。
ヨ「だけど…きっとオレを必要としてるのは……っく…」

ヨ「たま…」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、指先でそっとたまに触れて言いました。
ヨ「オレを…元の世界に、時の森に、帰してくれ…」

た「承知したぞ」
たまが穏やかに微笑むと、ふたりをまばゆい光が包みました。

(後半へ続く)

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2014-07-24 11:22:11 +0000