日本郵船 三池丸級 阿波丸 緑十字仕様

パンターF

「この度、救恤品輸送任務を受けました阿波丸です。武装は全撤去して緑十字の提示を行っています。安全な航海、初めてですね。え、その物資を積載ですか?そ、それは…約束違反では…?その、あの、…困りますぅ…」

トカゲのしっぽ切り

赤十字社との交渉が成立し、南方の連合軍捕虜、抑留民間人向けの救恤品輸送として、当時の凝った数少ない優秀船舶であった阿波丸が担当することになりました。
その輸送する物資の特殊性から、航海中の絶対安全保障を受けての航海となりました。
砲座はすべて撤去され、船体には緑十字が描き込まれます。電飾も設置されました。
こうして安道権を得て阿波丸は1945/02/17に救恤品と補給物資(すでに協定違反)を積み込んで一路南洋を目指します。
こうして末期の海を戦果とも関係なく救恤品を行く先々で下してシンガポールで帰路の支度をします。
この時に注目したのが日本軍、帰りも安道権が保障されている事から戦略物資の積載をしでかします。
もちろん船長は反対しましたが押し切られ、原油やガソリン、錫やタングステン、アルミニウムのインゴット、生ゴムの包みなど各種戦略物資が満載される事となりました。
当然暗号通信を解析して戦略物資の輸送を知ったアメリカは偵察機を飛ばして阿波丸の喫水線を確認します。
1945/03/28にシンガポールを出発した阿波丸を写真撮影した結果、喫水は満水状態でした。ここまで堂々と協定違反を行う日本に対して米軍は激おこぷんぷん丸ですが、ここで米海軍内部でも少々後ろめたいことが発生していました。
阿波丸の戦略物資輸送を知ったロックウッド少将はニミッツ提督に「阿波丸撃沈すべし」という意見具申を再三にわたって行っていますが、ニミッツ提督からの返事は何もありません。日本人なら大体察しがつくと思いますが、「自分は何も命令してないよ」という体を取りつつ、いざと言うときは「部下の独断」で責任をおっかぶせる気満々の対応です。
こうしてニミッツ提督の態度を「黙認」と解釈したロックウッド少将によって阿波丸の運命は決まりました
1945/04/01にクイーンフィッシュがレーダースクリーン上に船影をとらえ、魚雷を発射、阿波丸は撃沈されました。
そして戦後の裁判で潜水艦艦長が有罪判決を受け、日本政府はアメリカ側へ賠償交渉を行い、成果を上げる事が出来ました。
撃沈命令を受けて行動した末端にすべての責任が負わされるトカゲのしっぽ切りが日米両国で展開されたのです。

特徴的な緑十字はすべてバスの前面広告幕よろしく四隅をロープで引っ張って止める仕様です。彼女たちにとって、特別任務の塗装は服装では無く、服の上から着るゼッケンのようなものだと考えています。その任務に就く為に生まれてきたわけではないですか。

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2014-07-07 14:28:57 +0000