シャルノスの花嫁

甚一郎@カオスアカウント

あたしは何かを忘れていた。
大切な誰か。
救い出さなくてはいけない誰か。
駄目、駄目、思い出さなくては。
でも、いつも、彼が邪魔をする。

「メアリ」

「駄目よ、駄目よ、ーー、それだけは」

「メアリ」

「ええ」

「メアリ」

そうだ。あたしは綺麗な白いドレスに身を包み、
これから、ーー、彼と儀式を行うのだった。
忘れていた。それを、今の今まで、忘れていた。

「メアリ」

こちらを向いた彼の手が、あたしの頭を、やさしく梳いた。
それはまるで、仔猫を撫でるように。

「ええ、ええ好きよ、ーー」

「こんなこと、ええっと、は、初めてだから――」

彼は短く笑った。

あたし、変なこと、言ったかしら。

思考が鈍る頭のなか。
黒い闇に記憶を侵食されながら。

「ーー、」

あたしは大好きな彼へと、幸せだと、はにかんでみせた。

#漆黒のシャルノス#メリバ#メアリ・クラリッサ・クリスティ

2014-04-25 07:40:47 +0000