紅澪エンバーランドに蘇った死者は、なにも義に額づく者ばかりではなかった。
国境に程近い場所に「緋虹楼」なる商店を構えるアラーニヤ・レフカは、まさしくそんな死者の一人である。
赤輝蛍鉱が放つ橙の光にとっぷり浸かってなお青白い肌と包帯に隠した空の眼窩、そして腹に走る縫合された生々しい裂傷は、それを持つ彼女が死したことを確かに語っていた。
アラーニヤの店に並ぶのは、暗殺や諜報にまつわる道具ばかり。彼女は死の商人であった。生前も、そして死んだ後も。店に訪れるのは毒をもって志を遂げようとする者、そして更なる猛毒をもってそれを制さんとする者たちである。店の客であるというだけで、老若男女、氏素性を問わず、アラーニヤは豪奢な容貌でもって彼らを歓迎するだろう。
自らが蒔いた争いに巻き込まれて死んだ時も、それから幾許かを経て復活した折も、アラーニヤには特に感慨などなかった。「これでまた商売ができる」と一人笑んで楼の階段に佇む彼女は、さしずめ獲物を待つ蜘蛛であった。
「わたくしにしてみれば、お客様はみな神様ですわ。…無論、死神のほうですけれど」
■アラーニヤ・レフカ/女性/享年23歳
黒ずくめのドレス姿が常。衣装持ちでデザインが頻繁に変わる。遠目には喪服姿にも見えるが…？
生前から異常なほど肌が白く、露出度の高い服装の割に日光を嫌う。必要以上に外出することはないが、商売が絡む場合は例外である。
挑発的な外見に似合わず、店では堅実で実用的な商品を取り扱う。
特技は編み物と裁縫。店に並ぶ布製品は彼女が蜘蛛たちに織らせ紡がせた生地や糸を使用したハンドメイドである。
店の客になりそうな事情をもった人物を見抜くことができる。またそのような人物を彼女は「縁がある」と表現する。
死因は腹部の刺し傷。えぐり取られた右眼の代替品を密かに捜している。
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2014-02-27 07:20:30 +0000