● 彼は最初、魔女に操られるちっぽけな下僕の一つでしかなかった。
「失敗作」として、魔女に屠られる同胞たちをフラスコの中から見続けた彼は、
いつしか意志を持ち、魔女への復讐の念を宿すようになる。
彼には力があった。自分が思うがままの世界を、
「失敗作」でも生きられる世界を、作れるのだと信じていた。
あと一歩で、仲間たちの敵を取れる……
魔女を追い詰めたその時、彼の体は崩れ始めた。
貪欲に力を追い求めたあまり、吸収限界を超えてしまった機械の体。
かつて魔女によって仕掛けられたリミッターを外したその体は、
果てしない力を得た代償として、早すぎる死を迎えようとしていた。
狡猾な笑みを浮かべる魔女。そのときようやく、彼は罠に嵌められたのだと悟った。
「大人しく私に従えば永らえたものを……所詮は貴方も失敗作だった、ってことね」
崩れゆく体に逆らい、彼は声なき声を上げる。
思うがままに命を弄ぶ貴様は、神にでもなったつもりなのか?
貴様に殺された同胞たちは、私は――
去りゆく魔女の背中。彼の怨嗟の声は虚しく響く。
やがて塵一つ残さず、彼という存在はこの世から消え去った。
● 炎を纏う神獣は、ようやく己の使命を悟ることができた。
なぜ自分は、竜騎士と共にこの世界で戦わねばならなかったのか。
自分たちが、この世界で最後に戦う宿命の敵――
世界の背後でうごめく、災いをもたらす悪意の根源。
ただひたすらに我欲のために、災禍を振りまく姿なきその存在は「魔女」とも「幻魔」と称される。
仕える騎士団と共に長き戦いを渡り歩いた末に、彼らに課された最後の使命……
それは、災いを招く幻魔を討つことに他ならない。
大戦を終え平和が訪れた騎士団。
そこに忍び寄る闇を察知した竜騎士は、相棒の神獣と共に最後の戦に臨む。
「完成へと近づくためには、貴方達騎士団の司る意志の力が必要なの。大人しく道を開けなさい」
「はいそうですか、って訳にはいかないんでね。あんたもそろそろ年貢の治め時だよ、幻魔」
「我等の武を以って、太平の世を開かん。いざ、参るぞ!」
それは、未来を賭した最後の死闘の始まりであった――
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □
かなり遅れてしまいましたが、昨年PFNWで動かしていた2キャラの結末です。
当初の予定ではマンガ形式になる予定だったのですが、コミケその他同人に時間を割いた結果、結局一枚絵に……!
思い起こせば去年、完全に勢いのまま初の企画参加に乗り出したものでした。
段取りの悪さで色々な方にご迷惑もおかけしてしまったのですが、一方で企画を通じて多くの方にも交流していただける機会もあり、私としてはたいへん楽しく、貴重な体験をさせていただきました。
この場を借りて、改めてお詫びさせていただくと共に、厚く御礼を申し上げます。
いつかまた、どこかでお会いすることがございましたら、その時はよろしくお願いいたします!
2014/02/16
だしのや
2014-02-15 18:43:24 +0000