「しかし我々の仕事は?」 「勢いを『殺せ』と言われたなら殺せばいい、俺達は文字通り体張って受け止める役だ」 剥き出しになった狼の口の端がようやくまた上に向かい歪んだ。 「――そうか。水の流れを殺す手は、流れに板を立てるだけでもなかったな」 どんな水の流れにも源となる所がある。そして源泉でなくとも、より根元の近くに石を投げ込めば流れの勢いは落ちていく。 「死霊の群れだのそれを操る連中は俺達がどうとでもする。鬼の家に入り込んだんだ、連中には本物の地獄って奴を拝ませてやるさ」 「では、君等の首を狙う刀は我々が噛み折ってやろう」 要するに影狼のすべき事は本来の任務と大して変わらなかった。指揮官攻撃 ― 大刀や魔剣を持ったそれなりに装備のいい階級持ちどもを狙って叩く ― は、隠密集団としては本分に近い。 ただ叩くべき相手が工作員ではなく、叩くべき場所が戦場にあり、表を支える味方が兵卒ではなく極卒に代わっただけだ。無論殺意と剣と飛び道具は本来の任務より桁違いに多く向けられるが。 「じゃあ宜しく頼む」「こちらこそ」 男と女、鬼と狼、兵隊と隠密。姿も立場も全て違うはずの二匹の獣は、これから起きる血の宴を心待ちにするかのように口の端を上向きにして牙を見せ合った。 ▼------南青森さんの「帝国の守護者」の一部をお借りした…というより少し後の別解釈みたいなものです。【illust/3702909】階級とか会話内容についてはパラレルか何らかの勘違いみたいなもんだという事で一応佐藤節っぽくしようとしたけど結果はこれだよ。 ダイゴさんのキャラ崩壊っぷりが大誤算状態に…雪深い地域+地元+精兵補正と皇国パロ変化ということでひとつ。百合丸隊長の顔は…すみません 指揮官とその周辺を闇に紛れて爪と牙で引き裂いて壊乱させ最後に飛び道具で叩く、というのは一応元ネタっぽいかなーと思ったり。
2009-04-03 06:51:15 +0000