試製十糎対戦車砲(カト砲)弾薬

たまや C101土曜東ア30a

試製十糎対戦車砲(カト砲)は、昭和20年7月頃2門が竣工したと推定される、口径105mmの対戦車砲である。日本軍の対戦車砲としては最強で、同時期に研究されていた試製十糎戦車砲(ホリ砲)と同等の威力を有するよう計画された。使用弾種は、試製四式徹甲弾弾薬筒(全長969mm)と試製尖鋭弾弾薬筒(全長1195.3mm)が知られる。徹甲弾の威力は射距離1000mで貫通鋼板厚175mmとする資料もあるが、これが試製四式徹甲弾を指すかどうかははっきりしない。弾薬の寸法は、研究原簿中の起案図にある。図は国本戦車塾様にて公開されているものを基本とし、尖鋭弾の細部寸法と形状は、実物資料の実測値も参考として作図した。この実物資料は愛知県豊橋市の屑鉄屋で発見されたもので、既に一旦分解されて内容物は抜かれていた。発見場所からすると恐らく伊良湖試験場で射撃された弾丸であろう。これの各部寸法は、起案図のものとほぼ完全に一致する。弾丸の全長は九二式十糎加農の九一式尖鋭弾と同じで、細部寸法にも共通する箇所が多く見られる。同時期設計のホリ砲では、当初九一式尖鋭弾を改修して使用していることからも、これを設計の参考にしたことはほぼ間違いない。九一式尖鋭弾との相違点は、弾帯が2条となっていて、しかも高い位置にあり、その下方円筒部には薬莢と結合させた後にカシメるための凹溝を2本有する点である。起案図に記入がない弾帯寸法は実測の結果、16mm幅のものを10mmの間隔で2条取り付けていることが分かった。これは、口径は違うが三式十二糎高射砲の三式高射尖鋭弾と同じで興味深い。旋条痕は32条確認できる。そこでこの実物資料の弾丸が実際にカト砲で使用されたのかについて考えてみる。まずホリ砲の写真資料には、自動装填機上に弾薬筒が載せられた様子をとらえたものがある。これの弾丸は、明らかに弾帯が2条の尖鋭弾で、この試製尖鋭弾と外観は同じものではないかと考えられる。従って、カト砲とホリ砲で同じ弾丸を使用した時期があった可能性があり、この実物資料がどの砲で使用されたかは断定できない。ただ、ホリ砲の弾薬筒全長は恐らく尖鋭弾と思われるが、1230mmと言われている。もし初期の弾丸で、九一式尖鋭弾と同じ弾帯位置とすれば740mmの薬莢と組み合わせると1219.3mmとなって、これに近い数値となるが、薬莢形状が少し異なっていた可能性もある。

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2013-07-03 01:05:21 +0000