これは不味い。勿論このラーメンの事ではない。むしろこれは美味い。濃厚で濁った豚骨スープだが変な臭みや気持ち悪さが無く、シコシコの細麺と合わさり最強に見える。小食(自称)な私だがこれならあと3杯は軽く食べられるだろう。だがそれが不味いのだ。 ――城みなみがアイヒマン監督に「美食禁止令」を出されて1ヶ月。同僚が試合後に焼肉やら寿司やらと出かけて行くのを、指を咥えて見ているしかなかった彼女。限界だった―― 福岡に来たのに博多ラーメンを食べられないなんて! ――お得意のインターネットで深夜にも営業している店を探し、タクシーに飛び乗る。人通りの多い所に出ている屋台では誰かが通りがかるかもしれないという可能性もあり、人通りの少ない所に出ている屋台はなんだかイヤと言う謎の乙女心(もうすぐ29歳)を発揮し、店舗を構えた所に行く事にしたのだが―― 「(チームメイトの○○さんがこんな時間に、こんな所に来るなんて……)」 ――彼女は失念していた。店では出会ってしまったら逃げ場が無い事に―― 「(バレて無い……?)」 ――入り口近くのテーブル席に座った○○ら。カウンターに座る城には気づかなかった様だ。これなら○○らが店を出てから城は帰れば良い。冷静になった城が○○が男を連れているのに気づく―― 「(こいつはメチャゆるさんよなああああ)」 ――自分の事を棚に上げ、城は二人に悟られない様、観察を始めるのだった―― 一体、○○さんとは誰なんだい!!
2013-06-19 18:16:09 +0000