みんなが眠った夜更に一人進む列車があった。
うんと遠い街を目ざしたその客車は、都会への憧れを、知らない街への旅情を、
田舎への郷愁を高鳴らせた。
青い車体を輝かせて、遠いシグナルを後にして、誰もいないホームを駆け抜けて
また朝日が巡る時まで、みんなを運び続けた。
時間がめぐり、速度が300キロに達した時代に、彼は必要とされなくなった。
最後までものもいわず、1067ミリの鉄路をかけていく長い影。
「いかないでくれよ、まだ話したいことがいっぱいあるんだ!」
その声は届くことなく、テールサインを残して去ってゆく。
憧れも朝日のまぶしさも、寝台のシーツの感触も、みんな過ぎたこと。
さよなら、ブルートレイン。
2009-03-22 23:39:21 +0000