魔法都市オレスツリーにも男たちの欲望を叶える一角が存在する。
ある時その中の一店舗がミスリルを混合した魔導回路を利用する発光看板を用いた所、その柔らかくも怪しい光に吸い寄せられるように客が集まり、連日引きも切らぬ大盛況となった。
それを見た周囲の店も我先にと導入し、通り一帯が発光看板で埋め尽くされたのである。
この回路に魔力を通すのは主に見習い魔導士の役目であり、一晩二交代制で彼らの小遣い稼ぎに役立っており、また一定の魔力の放出と言う行為自体が訓練の一環として適しているため人気は高く人員になかなか空きが出ない。
魔力を通さぬ状態では鈍く銀色に輝くのみの看板の発する光の色合いは魔導士の性質と技術によって代わり、多様な色数を安定して出せる者ほど高額の報酬を受け取れるようである。
その夜を知らない街の美しさは人々を引きつけ、現在では見物の為だけに訪れる者も多い
「ハイロンド紀行」P43 (フォリウム出版illust/34118112刊)
2013-03-14 15:39:10 +0000