現在の名古屋鉄道の起源は、1898年に日本で2番目に開業した路面電車である名古屋電気鉄道に遡ることができます。始めは名古屋市の市内電車として開業したものの、京浜電気鉄道や阪神電気鉄道の成功に影響を受けて名古屋市から北へ路線を伸ばすインターアーバンである郡部線の建設を進め、1912年に最初の区間を開通させます。この際に旅客用として38両製造されたのが本作の168形電車です。車番はそれまでの市内専用の電車の続番で、全長10メートル以上の単車としては最大級の大型車体となり、台車はイギリス製のラジアル台車をはいていました。塗装は薄い黄色とカーマインのツートンをベースに側面窓周りを淡黄色に塗り、窓下に青帯を入れて、省線の2等車(現在のグリーン車)なみの設備であることをアピールしていました。のちに501~538に改番され、名岐鉄道時代にはデシ500形と呼ばれました。しかし、後継の大型ボギー車の登場や老朽化によって姿を消し、1938年までにいったん全車廃車されました。しかし、戦時中に思わぬ形で名鉄線上に復活することになったのです。この電車は姉妹車両が非常にバラエティーに富んでいるうえに、とんでもなく複雑な経緯を経ているので近々、今年最初の迷列車動画で紹介する予定です。なお、本車をはじめとする名鉄の鉄道線用の単車を私は「デシ」と、「単車」の単の字をとって、「デシタン」と呼んでいます。今後もこのデシタンの仲間たちのイラストを投稿する予定です。なお、本作は鉄道ピクトリアル2007年7月号の「知られざる名鉄電車史① 郊外線草創期の車両-デシ500とその仲間たち」の記述および掲載された図面を元に作画しました。
2013-01-03 14:31:32 +0000