大きな大きな私鉄の小さな小さな電車

うきは

この、いかにも古風な小柄な電車は、大近鉄の片隅で1992年まで現役であった
いまから80年ほど前、北勢鉄道(三重交通を経て近鉄北勢線、現在の三岐鉄道北勢線)が六石~阿下喜間延伸時に、
日車名古屋支店に製造させた電車モハニ50がその前身である
最初6両、1949年には追加で3両が製造され、松阪線を除く三重交通各線で使用される代表形式となった
1965年に北勢線、湯の山線、内部・八王子線が近鉄に合併されるとモニ220型を名乗るようになる
1977年より近代化された270形が導入され始めると転属と廃車を繰り返し、
近代化されつつも1992年に最後の2連2本(後年Tc化され同形でMc+Tcを組んだ)が引退、廃車となった
内部八王子線に行った仲間は260形導入後に電装解除T車化され、今も260形に組み込まれて使用されている
これらは近鉄では最古参の車輌であると共に、貴重な三重交通の生き残りでもある

そんな近鉄に残るナローゲージ「特殊軽便線」にこないだの紅楼夢行の時に乗車してきた
時間と手間の都合で四日市~日永間の僅かな距離だったが、貴重なニブロクを体験してきた
前回、内部八王子線に乗ったのは2007年のやはり紅楼夢の帰りがけだから5年程経過している
驚くくらいに何も変わっていなかったが、この規模の鉄道が今まで残ってきているのだから、
5年程度ではなにも変わりはしないだろう・・・そう思っていたのだが・・・
近鉄は収支悪化・・・つまり赤字でもうどうにもならないので、
内部・八王子線の廃止、BRT(バス高速輸送システム)への転換を四日市市に提案している
結論は来年夏ごろ。それまでに鉄道として存続させるのか、バス転換させるのかが決定される
いま、ひとつの山場に差し掛かっていることは確かであろう
同じく、近鉄がナローで運行していた桑名エリアの北勢線は、三岐鉄道が引き取り鉄道輸送を継続
様々な梃入れを実施した影響で利用客数は上昇。逆に並行バス路線を撤退に追い込むと言う事態に至っている
内部・八王子線とは環境は異なるが、この規格の鉄道でも十分生き残ることはできることを立証した
近年、近鉄は伊賀線、養老線、北勢線と不採算支線の転換を勧めてきたが、いずれも本線規格とは異なる規格の路線である
本線規格に併せれば(改軌、改築)本線と一体化した運用が行え、収支も改善できる可能性があるが、
改築費用を果たして回収することができるのか?というのが問題点である
また、すでに輸送システムとして稼動している鉄道路線を、長期間にわたって運休し改造することは利用者側にとっては好ましくない
工事期間中、バス代行をしている間に「バスで十分」と旅客が判断すれば、鉄道を復活させても旅客は戻ってこなくなってしまうだろう
いかに今ある設備を有効活用できるかが肝であると言わざるを得ない。しばし静観すべき事案である
マニアとしては貴重なナローなので残してもらいたいが、それで会社が立ち行かなくなると元も子もない・・・
そして、三重県下では近鉄を除くと民間資本の鉄道事業者は北勢線を継いだ三岐鉄道しかない
北勢線は元々自社の三岐線とエリアが重複しているという立地から運営を引き受けたといって過言ではない
同じ県下とはいえ、桑名と四日市と事業エリアが異なる三岐に背負わせるのはいささか厳しいと言わざるを得ない
ともすると、これが最後になるかもしれない近鉄ナローを後にし、本線ホームへと上がったのだった・・・

あ、紅楼夢の旅行記はもう少しお待ちを
最終日まで来てるんで・・・

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2012-11-16 09:52:01 +0000