書庫守が黄金樹の守り人に贈った品、それは真新しい煙管であった。
「極大魔術の件の礼だ。どっかに煙管を無くしたとぼやいている怪我人がいたんでなァ」
「見慣れない素材だねぇ。エルドールの鉱物かい?」
木製の部分は値の張る香木と知れたが、守り人の博識をもってしても雁首の素材は分からなかった。
書庫守はわずかに言い淀んだが、答えを返す。
「黒鱗鋼つってねェ。軽く、熱に強く、魔力や瘴気をかなり遮断する。
――ソイツは私の中のモン、つまり古代竜の力の余波で生まれた魔獣の表皮でな。
私の意志で具現化する、超自然的な鋼だ。それだけ小さければ効果のほども知れているが、
辺りの瘴気も多少は緩和するだろうさァ。守りだ守り」
成程、書庫守の身に着けた鎧と雁首の材質は似ていた。
その点は合点がいき、そして――守り人は別の疑問を口にする。
「なるほどね。……で、どうして今これを?」
その問いに書庫守は自嘲するように鼻を鳴らして答えた。、
「……この間記憶を呼び出した時、あんたと旦那はまったく似てないって言っただろォ。
ありゃ間違いだ。賢しげな顔して、病んでロクでもない死に方しそうなとこがそっくりでやがる。
――エルドールは過ちを消し去らず、認める。
それは二度と過たないようにするための手段だ。その品も。……そういうことだ」
「……そう。ありがとう」
迷いない紅い瞳を金翼のフードが覆う。
永劫の書庫守と黄金樹の守り人。守護者二人はごく自然な別れのようにすれ違い、互いの戦場へと向かった。
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今まで寝てたんでわかんなかったけど背丈の差(30cm)におののいたアカウントがこちらです
バフォメットへの合流・エンカウント、どしどしどうぞ!
黄金樹の守り人【illust/26905285】
永劫の書庫守【illust/26923854】
お借りした素材【illust/8742017】【illust/18710406】【illust/13754871】【illust/26903685】
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PixivファンタジアSRはファンタジーイラストを描くユーザー企画です【illust/26890887】
2012-06-13 18:12:20 +0000