†
剣戦城にて陣死したアルノルド王の亡骸が近衛部隊によって本国に護送されてゆくのを見送るマルグレイテ王女の、いやマルグレイテ女王の瞳は乾いていたという。
ルザリア国境の灰色大橋から海路を経て、負傷したアルノルド王が陣を張る南ノールガルドへと向かう途中のマルグレイテが、人気のない甲板で、薄暗い森の中で、密かに嗚咽するのを、女王の薔薇の団員たちはよく知っていた。
暗愚ではないマルグレイテは、人前で苛立ちを顕すことはない。団員たちがマルグレイテを哀れみの目で見ないことは、彼女の将器への敬義であった。同じ女として。おかわいそうに、などと誰が口にできよう。
しかしマルグレイテが命を削るように剣戦城に急げば急ぐほど、スカーレットの身より遠ざかる団員たちは後ろ髪を強く引かれた。離れれば離れるほど不安は募った。そんなものは幻想だうぬぼれだ、ルザリアという国の強さを信じろ。女王を信じろ。この任務はこの次の、さらにその次の戦争のために必要なものなのだ。そう言い聞かせてマルグレイテと共に戦場を突き抜けた。戦には勝った。だがアルノルド王は死んだ。
これが王を失うということか!
団員たちは戦慄した。
スカーレット率いるカザスランダンの本隊が撤退したという報せが入ったのは、その日の夕方のことであった。
†
女王となったマルグレイテは、オルドアの北の国境付近で交戦することとなった。スカーレット女王が陣を張る戦場はここより西、ルザリアとの国境付近である。それは奇しくも、スカーレットが竜剣を求めて出征した最初の地にほど近かった。
女王の薔薇は、ノールガルドの戦士たちとはオルドア北の国境付近にて共同戦線を解くことなり、ここより南西へと行軍する。
「ご武運を」
「御武運を」
彼ら彼女らはそう言って武器の柄を合わせ、別れた。
「また」「さようなら」などとは誰も口にしなかった。
†
渓谷を抜け、オルドアの地に布陣するルザリア軍の旗印が見えた時、娘時分の団員が「ルザリアだわ」と言ったままむせび泣いた。年長の女は明るい声で言った。
「そうだ。女王のおわすところそれが我々の国、戦場だ。」
「ノールガルドだけじゃなくメイトリクス様にも貸しをつくってやりましょうよ」
背の高い女が言った。
「メイトリクスめだけに良い格好はさせないわ」
「あの方、本当は女王の前でカッコつけたくて私たちをお使いに出したのだったりして!」
「やだー、メイトリクス様ったらけなげ」
「ゲッツ様のほうがいいと思うなあー」
「スカーレット様はどんな殿方にも渡しませんわ!」
「今度こそアヤとその狗どもをギャフンと言わせねばな」
彼女らは高台より鬨の声を挙げた。
武器をかかげ、銅鑼を打ちならし、騎馬を嘶かせて戦場になだれこんだ。
薔薇は今こそ、女王のそばに。
†
†
†
長すぎやしないか。
■最終章のテーマは「薔薇はいつでも女王のそばに」です。
Theme of the final chapter is"Always be with the Queen"
・今回はスカーレット女王のいる「オルドア西部」にて交戦中です。
・今までと同じく、ギルドメンバーや公式キャラなどを使って作品にしてください。
・同盟中のギルド、敵対しているギルドなどは百科【女王の薔薇】(pixpedia/【女王の薔薇】)にてまとめています。
・百科は適宜更新されますので、ギルドメンバーは百科を随時チェックして下さい。
■必須タグ: 【女王の薔薇】 希望海の黄昏【西方同盟】
・現在のギルドの状態:スカーレット女王と共にオルドア西部にて交戦中
■お知らせとか気が早いんですがアフターについて
三章期間中は体調不良などによりご心配をおかけしました。
さて、アフターについてですが、基本的には公式のアフターマナーに準拠します。
非公式イベントなどへの参加も不問です。私のキャラ「ルベダ」は引き続き交流フリーとします。
これはわがままではありますが、アフターでも女王の薔薇のメンバーが出ている作品には【女王の薔薇】タグをつけていただけますと嬉しいです。メンバーの皆さんがその後どうなったのか、本当はどんな人物であったのか、またどんな人々と関わってゆくのか、拝見させていただければこれ幸いです。
†
2012-06-12 11:33:43 +0000