野戦重砲の各種戦用弾薬

たまや C101土曜東ア30a

6月2~3日に行われた軍事史学会年次大会で参考展示した野戦重砲の各種戦用弾薬の図(照明弾・発煙弾・焼夷弾等は除く)に一部加筆したものです。以下、左から順に説明。●破甲榴弾は、主に堅固な築城の破壊・艦艇の撃沈に用いる弾種である。弾体は鋼製で焼入れが施してある。炸薬は黄那薬を用い、信管は八九式小弾底信管「加」を装着した。制定当初の炸薬は全て鋳造一体成形であったが、鬆が入りやすく、青島戦役ではこれが原因で腔発が発生した。そのため以後は図のように分割成形に改められた。また、制定当初は左端のように蛋形部が黄色、定心部が黒、円筒部が白という塗装であった。しかし取扱中に塗料の剥脱汚染を来たし、塗り替え費用がかさむことから、大正5年に黒塗に改められた。破甲榴弾は、図示した以外にも各種の火砲に装備されており、後に弾体を強化した各種口径の九五式破甲榴弾が制定された。ほかに十五加では九三式榴弾・九三式尖鋭弾・榴霰弾などが使用された。九六式十五糎加農においては、この砲専用の九六式尖鋭弾も用いた。●十五榴用の九二式榴弾・九二式尖鋭弾は比較的多用された榴弾である。前者は威力半径35m、後者は30mで、どちらも用途は人馬の殺傷であるが、九二式尖鋭弾は射程増進のため、頭部のRを九二式榴弾の300mmから2500mmとし、弾尾もボートテール状とした。一般に、尖鋭弾は射程が伸びる代わりに野戦用としては多少精度が低下した。ガス弾は、図示した九三式あを弾以外に各種あか弾・きい弾・あをしろ弾・試製ちゃ弾があり、あか弾ときい弾が多用された。詳細は以前投稿した図の通り。このほか、榴霰弾「甲・「乙」などを用いた。●三八式十二糎榴弾砲の戦用弾薬は制定当初、破甲榴弾・鋳鉄破甲榴弾・榴霰弾の各種のものがあった。しかし榴弾が長らく存在せず不都合があったため、後に九七式改造銑製榴弾「甲」・「乙」、九八式榴弾が制定された。九八式榴弾は、それまでの榴弾とは異なり、伝火薬筒室を使わずに、炸薬に穿った孔に直接伝火薬筒を挿入することで部品数を減らしてあった。信管は、瞬発・短延期の切り替えが可能な九八式二働信管を装着した。●十糎加農で用いる弾薬は、十五糎榴弾砲の弾薬と基本構造は同じで、これの小型のものと言ってよい。信管はいずれも八八式瞬発・八八式短延期信管の「野山加」を用いるが、信管種を「榴臼」にすることで十糎榴弾砲でも使用できた。

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2012-06-05 14:27:39 +0000