いつから彼女が彼女であったのか 誰も覚えていない。 貪食の魔は彼女を見初めた。彼は彼女をcalicem<杯>と名付けた。 長く、永く 魔は杯を傍に置いた。 魔に命じられ、彼女は人を喰った。 十喰って味を覚えた。 百喰って手を得た。 千喰って考えることを学んだ。 万喰って―――――――――― いつから彼女が彼女になったのか 誰も知らない。 いつからか、杯は待っていた。 ただその時を 待っていた。 長く、長く、長く長く長く永く永く永く永く永く永く永く永く永くながくながくながくながく――――――――――――――「さぁ 最後の晩餐だ」―――――――――――――― 彼女が欲した結末は 叶ったのだろうか。 飲み干された 食前酒は 香りだけを遺し――――――――――空の杯は、卓から滑り落ち――――――――――――――――――――――――――――物語はここで途切れる。
2012-05-05 12:59:07 +0000