翌日はオフという事で、近場の展望台へ。
姉妹の間でどんな話し合いがされたのか、誰も昨日の話しを蒸し返さない。助かったと思いつつも、なんだかちょっと不気味。
「山というよりは丘に近いな。」
頂上近くの駐車場に車を停め、後は歩きだ。勝手を知っている初音と綾音はどんどん先に行ってしまう。
「周りに高い物が何も無いから、とっても見晴らしが良いんだよ!」
展望台へ続くいトンネルを前にして琴音さんがもじもじしている。
途中で曲がっているらしく、向こう側から光は差し込んでいないし、照明の類も見えないから、意外と暗い。
「どうしたんですか?」
「私、暗いのは苦手で…、その…手を…。」
そう言ってチラチラとこちらを見る。つまり手をつないで欲しい訳だ。
俺を夜のバス停に呼び出したりする位だから暗い所が苦手な筈も無いが、イジワルはしないでおこう。
「じゃあ、手をつなぎましょう。はい。」
俺が右手を差し出すと琴音さんはギュッと両手で握り締める。小さくて柔らかく暖かい手だ。本気で怖がっているみたいだから、閉暗所が嫌いなのかも。
途中にいくつか裸電球の照明はあったが予想以上に暗く、トンネルは何度も折れ曲がり思っていたよりずっと長かった。その間ずーっと琴音さんは俺にしがみついたまま、固く目を閉じていた。あんまり子供っぽかったので、ほっぺたをぷにっとしようかとも思ったが気の毒で止めた。
ようやく出口。
溢れかえるような日差しの中に出ると、初音の声が降ってきた。
「お姉ちゃんおーそーいー!あとちょっとだから早くー!」
つづいて綾音。
「あんまり遅いと置いてっちゃうよー!」
既に置いて行ってるクセに。
返答するより先に、初音が俺にしがみつく琴音さんを見て、
「お姉ちゃん、『暗いの怖い』ってお兄ちゃんに迷惑かけたでしょ?ダメだよ。」
妹の指摘に珍しく琴音さんが苦笑いする。どうやら本当に苦手らしい。
「スタン様、参りましょう!」
「あぁ、行こう。」
つないでいた手を握りなおし、石段を登り始めた。
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2012-04-27 06:48:05 +0000