ヒト。トシュマ・ソンガイという女性の異言から成立した都市ムンマルトーの現在の長である。彼女の言語は何処のものでもなく(地理的にはセイモト語のはずなのだが)「世界の最初の言葉」であると言われ、その讖緯は「世界の統一」を予言していると言われる。かの都市が花を多く栽培するのは彼女が花を愛し「統一後の世界は花に満ちるだろう」と言ったためである。ムンマルトーは幸いに鉱物資源に恵まれており、その貿易を通じてえた富みを観賞用植物の栽培に当てている。この街の人々は帰依の深さを表し豊かさを表すために大きな布の服を纏い、しかも複雑に植物性の染料で染めている。そしてシムライとがここに属していたように、名キルノオである「炸裂」を開発してもいる。「炸裂」もムンマルトーの重要輸出品である。商品植物栽培が可能ということは麻薬ルートも持っているということだ。マッウもその長に相応しく、髪を染料で染め花を髪に飾っている。しかしその年令は幾つか分からず20大後半に見えるその容姿とは裏腹に60年近く長であると言われる。長に選ばれたのはその卓越した巫としての能力にあった。巫とは異言を発するものである。戦人も「複我」に至ると異言を発するが、それは精神や身体の組み換えのためである。対して巫の異言は讖緯である。学問では、不信家(ユンチェットワ)を始めとする実証と文字によるもののみを研究するものもいるが、神秘家(ヒオウラスミー)も多く、それは生物/物理/哲学/言語学のあらゆる分野にまたがっている。そして彼等が重要視するのが讖緯である。それは文字を超えた何か、世界が与える何かと観念されている。マッウは、よく異言をなし人々にカリスマ的人気を得ている。ただ彼がただの巫と違うのは、優れた政治能力をも持つことである。その年令から、50年前の連邦によるケテル擾乱にも関わっていたとも推察される。そしてリバイザと通じておりセイモトのお尋ね者であるバルスを受け入れる決断をし、ケルミエ軍に加わることになる。以後セイモトは「十四宗家」の「玄裔(くろすえ)」と「嘗枉(なまがり)」とムンマルトーに蹂躙される。ムンマルトーは以後もケルミエ軍の中心にいつづけたが、彼は第二章の最後に死ぬ。ムンマルトー自体はアクアポリスの融和政策に積極的に関与し、「天使党」の本貫地である近隣のエサレンと接近したたために、紅眼の最終戦争の真っ先の標的にされ消滅する。
2012-04-26 08:00:17 +0000