【PF4】キャッスル・カタストロフィ

AKINONA(あきのな)

 婚礼衣装を身につけたまま、赤く燃える炎と青く輝く星の欠片に呑まれていきながら、崩壊する僕の城の中で、彼女は目に涙を浮かべ、僕の手を離すとこう言った。
「ああ、ごめんなさい。けれど、鳥になれば、あなたはここから逃げることができる」
 伴侶を失った僕は種族の特性として、だがしかしどういうわけか飛べない鳥になってしまい(正直な話、まさかドードー鳥になるとは思いもよらなかった)、数日前に出会ったばかりの生き別れの異父妹(実のところ彼女は洗濯娘として僕の城に何度も来訪していたのだがその事を知ったのは後日だった)すなわちエアリエルに抱えられながら崩壊する城から脱出することになった。
 エアリエルが、彼女と僕の結婚祝いにオペラのチケットをプレゼントしようと劇場に立ち寄り、婚礼の宴への到着が数分遅れ、僕が城の外に迎えにいくことがなかったら、きっと僕も彼女と、そして城で暮らしていた僕の姉達と運命を共にしただろう。
 僕の城(そう、僕の城なのだ。セントラルが滅びた今でも)には未だにあの日降り注いだ大量の星の欠片が眠っていて、その中には僕の婚約者も含まれている。星燭財団の方々に詳しい調査を依頼し、霊廟を建てたいのに、僕らは近づくことすら叶わない。
 再建にはおそらく大いにスターズ銀行のお世話になるだろう。前借りした竪琴の修理代金を現在返済中なのだけれど、僕らが今働いているこの船の船長さんは随分と気前が良いので(渾身のシラガネ卿12曲メドレーも功を奏したようで、まったく、僕の妹ときたら何て素晴らしい詩人なんだろう!)この調子だと返済が早くなりそうで助かっている。
 そして僕らの城には今や「従者」と呼ばれる人達もところどころに住み着いて暮らしているらしい。
 エアリエルも僕も僕の先生も、そんな人達を追い出す気など一切なく、そして、婚約者と同じく城のどこかで欠片と共に眠っているはずの、賑やかなことが大好きで寂しいことを何よりも苦手にしていた陽気な姉達も喜んでいるかもしれないということで、僕らの城と、僕の今でも誰よりも愛しい婚約者、そして愛すべき姉達は現在、人目にあまり付かない雲の上で、僕らの帰りをゆっくりと待っているのだ。
<ドードー鳥になった王子の話・その4> 
★今更ですが過去話です。ドードーさんがドードーさんになった日の話。明るく楽しく暮らす前には色々あったうちの【http://p.tl/i/8532882

#pixiv Fantasia Ⅳ#【minstreLaundry】#翼ある城#◆akinonaptionovel#なぜ全部が無いのか

2011-12-25 10:30:10 +0000