ここに相思相愛の姉妹と男が一人いた。
姉妹は幼い頃より抱えていた確執を乗り越え、心から感情を交えていた。歴史の表舞台には決して出てこない一人のこの男の存在がいることを余人は知る由もない。
「信長」
男は右手をもどかしそうに動かし、信長と呼ばれた姉は「ん?」と訝しげに振り向いた。
ここは信長の居城の一室・その私的空間である。二人は戦時と同じ位の忙しさの中で一時の忙中閑ありを過ごしていた。
「おいで」
「何よ」
抵抗するような応え方をするのは、この姉の性格だからと男は知っている。言葉とは裏腹にそう言いながらも、すたすたと男の脇に歩いて座る。
男は待ってましたとばかり、スッとその逞しい腕を伸ばし、緋色のマントに負けぬ紅さを持つ髪にそっと手を添えた。そしてくしゃくしゃと優しく頭を撫でた。
「気持ち良い?」
「ん…悪くは無いわよ」
この男にしか見せない笑顔を信長は見せた。●キャプションのSSはマイピクさんが考えてくださりました。ありがとうございます(*´∀`*)
2011-11-29 16:15:06 +0000